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いい人でいるのを、やめる

相手の立場になって、考えること。昔はこれが一番大切だと思っていた。

結婚して数年たった頃、主人の母親が突然この世を去った。私の存在をすごく大切に思ってくれ、気にかけてもくれていた。そして、多くは語らなかったが、女性の芯の強さを身をもって教えてくれた存在だった。義母が亡くなってから、主人の家は、家族関係が崩壊した。最初は、ほんの小さな糸のほつれだったが、気がつけば、元通りになることのない永遠の決別となった。母の存在の偉大さが身に染みた。義母は、家族の柱となり、光となり、家族を支え、照らしていたのだった。柱と光を失った家族は、みるみるうちに暗黒化した。そして、嫁である私は、その暗黒化した主人家族の揉め事に巻き込まれることになる。相手の立場になって考え、行動していた私は、どんなに理不尽だと思ったことがあっても、相手の立場に立って…を貫いていた。

当たり前のように『これ、しといてね』何かと言えば『長男の嫁のくせに』何か物を身内の人が譲ってくれたら『泥棒ですか?』あの頃、そんな言葉ばかり、あびせられていた。毎日頭痛薬を飲まないといられなくなっていた。そして、自分の感情が嵐のように吹き荒れていても、自分の湧き出した感情の違和感に蓋をして、見て見ぬふりを数ヶ月続けていた。

そんなある日、主人が家族と言い争っている声が、電話越しに聞こえてきたとき、急速に体温が下がっていくのを感じ、耐えられないほど寒くなり身体が震えてきた。心の温度も下がりきってしまったようだった。『もう、限界…』そのとき、初めて自分の湧き出た感情の違和感を無視し続けていたことを後悔し、真剣に自分の感情と向き合うことを決意した。それは、自分の奥底にあったブラックな部分と向き合うことになった。良い嫁にみられたい、良い義姉にみられたい、いい人に思われたい。そう、それが本音だったようだ。わたしは、相手の立場に立って考える、そう思いながらも、本当は自分がいい人にみられたい、そんな思いが裏に隠れていることを知り、そんな人間だったんだと、傷つき、幻滅して泣いた。1時間ほどして泣き終わると、スッキリして、それも私か…。と、そんな自分を受け入れた自分がいた。そして、いい人でいることを辞めることにした。

そうすると、なぜだか気持ちが軽くなり、義母が亡くなってから、暗く覆われていた世界がパッーと明るくなった気がした。すると、考え方も変わった。辛かった出来事が、私の糧になったのだ。

傷つきたくないのも、わかる。でも自分から湧き出てきた感情の違和感に蓋をするのではなく、時には勇気を持って、自分の感情の行方に寄り添っていくと、今まで見えていなかった世界が見えてくる。明るく澄み切った世界が。

#自分にとって大切なこと #自分の感情に向き合う #今まで見えていなかった世界

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