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ジェンダー・クライムを読んで

今回は、天童荒太さんのジェンダー・クライムの感想を書いていこうと思います。以下公式サイトのあらすじより

誰もが容疑者。誰もが当事者。
性にまつわる犯罪……ジェンダー・クライムは連鎖する。

土手下に転がされていた男性の遺体。
暴行の痕が残る体には、メッセージが残されていた。

「目には目を」

なんと男の息子は、3年前に起きた集団レイプ事件の加害者だった――。
次々現れる容疑者、そして新たな殺人。
罪を償うべきは、あなたかもしれない。

天童荒太の原点回帰にして、記念碑的作品!

文藝春秋

 私は天童さんの作品を初めて読みました。
以前、高校の図書館でインパクトのある表紙の本があったと記憶している程度です。クライムサスペンスということで期待していると、案外あっさりとした展開でした。ちょっと昔の日本の刑事ドラマを見ている様な会話が多いと感じました。年配の刑事と新米刑事のやり取りなど。

ここからはネタバレを含むので要注意です


 私が疑問に感じた点は、レイプ被害者だった妻が息子の事件をきっかけとして、夫をあの様な殺し方をするのだろうかという点です。
かつて愛した男の浮気の事実を知ったとしても、旦那を拷問するかのような殺し方をして投げ捨てるのか?
通常だったらもっとシンプルな殺し方をすると思います。
また夫の体内に、尻から手がかりとなる紙を入れるか?
刑事たちが紙を見つけなかったら、話は終わってしまいます。
だから物語を強調するための殺し方として、今回は選ばれたのだろうと推測します。しかし、犯人が妻でなければこの殺し方も読者からは共感を得られたのではないでしょうか?

 ジェンダー問題を扱うということなので、もっとそこを掘り下げて欲しかったと感じました。女性警官、ボランティア団体の女性、被疑者の家族の心情や考えも描かれていますが、もっとダイナミックなものや心の傷の大きさを読者に考えさせるだけのインパクトが欲しかったです。

 全体としては読みやすいので、すらすらと読み進められます。
ただ最近、私が若い方の作品を多く読んできたこともあって、「ちょっとおじさんが書いた本だな」と感じることが多かったです。
ただし、そのおじさん風が好きな方にとっては味わい深いのだと思います。

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