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電脳の憑きもの

 いつも逃げ回っている。捕まえてもすぐに逃げ出す。その繰り返しだ。気を抜くと、すぐにブックマーク周辺をうろつく。

 メールなり調べものなり、やらなくちゃいけない作業を片付けようとパソコンを開く。必要なアプリやwebページに辿り着き、画面をぼんやり眺めていると、いつの間にかマウスがすぅっと動いて、ブックマーク保存しているXやNetflix、YouTubeのサイトを選び、クリックが進む。

 「開け、ゴマ!」

 アリババのような開かんとする意思は微塵もないのに、気がつけば、何ページもタブが増えており、おぉっと!と慌ててページを閉じる。「今はそんな場合じゃないぞ」。

 しかし、少しするとまた新たなページが開かれている。違うタブで同じページが何個も並んでいることすらある。もはや怪奇現象である。

 無意識のうちに、手が、指がブックマークへのびる。堕落へと誘うべく、その憑きものはぼくを操縦する。かなり厄介だ。

 そのページを開いたとて、何か目的があるわけじゃない。目の前になんとなく現れたつぶやきや動画をなんとなくクリックして、暇つぶしを始めるだけだ。いや、暇などない。やることはあるのに、目をそらし逃れようと、そんなのやりたくないよ!とインターネットリゾートバカンスを過ごさせようとする。困ったもんだ。

 そんなところに漂っていても、現状は一つも打破しない。油断すれば、"暇じゃない暇つぶし"でいくらでも時間が溶けていく

 この炭酸が抜けたような、ぬるっとした時間さえどうにかなれば、もっと充実した一日が過ごせるはずなのに。週に5日は、そんなことを考えてしまう。無意識を意識できるようになったのはいい変化だ。進歩である。しかし、まだ憑きものが落ちる気配はない。しぶとそう……。

 ああ、いつか、パソコンをぶん投げられる日がやってきますように。

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