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つながらない猫

もしも猫がWi-Fiとつながっていたのならば。

野良猫とけんかしたのか、右後ろ足を引きずりながら、ぴょんぴょんと小さく飛び回りながら移動するタラをみて、ふとそんなことを考えた。

目が合えば、にゃあ、にゃっ、と声をかけてくれる猫たち。とはいえ、言葉が伝わるわけもないので、大雑把には感情を把握でできても、その詳細までにはたどり着けない。それどころか、ぼくは声以外の尻尾や喉の鳴り具合などの記号で読み取れても、ぼくのそれは伝えることができない。

どれだけタラのことを心配したことか。

その過程で、家に来たばかりの生後1ヶ月未満200gほどの小さいとき、同じようにか弱い声で震えて、死にそうになっていたの思い出し、あれからの4年以上の月日の生の記憶を噛み締めていたかは、きっと伝わらない。そういえば、尿路結石になった治療していたときも、同じような情けない声をしていたっけな。一応、5匹の中のボスのくせに、一番甘えん坊で、いつも自宅警備してるニートかってくらい家の中にいて、こうやって弱ってる様子が、情を膨らませる。

猫がWi-Fiを体内に宿していれば、何かしらのテクノロジーで発信された電波を拾えるかもしれない。こちらの声も逆に、拾ってもらえるかもしれない。そしたら、ぼくの気持ちは伝わるんじゃないか。

......と考えてはみるも、”つながらない”ことが生々しくて、本来的な動物のあり方なのだろうから、やはりWi-Fiなどなくて良い。むしろ人間同士であっても断ち切ってもいい電波ばかりである。つながされる時代に、つながらないを選べる逞しさが、現代の生きる力なのだろう。やっぱり猫はすごい。

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