茹だる様な寝苦しさに目を覚ました。
否、半覚醒だろうか。
目蓋は重く開いたのか何如かも分からない。

ううん…息苦しい。

汗を拭おうと腕を上げようとして気付く。

動かない。

ピクリとも身体は動かない。
だが、分かる事が有る。

狭いアパートに似つかわしくない大きめな窓。
其処に紅い襦袢を着た髪の長い女が居る事。

クーラーを掛けているのだから
窓は開けていない筈なのに
女は窓の外に手を伸ばしている…

………ゆらり

女の髪が揺れて顔が此方に向いた。

私はゾッとした。

長い髪に隠れて見えない表情。
口元だけやたら赫い赫い紅が覗く。

動かない私を起きたと察知したのか
ゆるりと女は近付いた。

畳を歩く足音も
襦袢の衣擦れの音さえも無く。

私の枕元に座り
髪を垂らしながら覗き込んできた。

……其れでも女の顔は見えない。

長い長い黒髪
やたらと生っ白い肌
赫だけが目立つ唇

唇が動いた。
だが、声は聞こえない。
もう一度腕を上げようと試みるも無駄な事…

女の生っ白い両の手が私の首に掛る。

そうして気付く。

嗚呼、此の女は
…怨んで居たのか、と──────────




昨日、九州に住んでいた事を思い出しながら書いていたから、恐怖体験もついでに思い出しました。

初めての一人暮らしをした古い二階建て木造アパート。

狭いアパートでも、バス、トイレ別で、陽当たり良好。
街中から一寸離れてはいるけど、駅も割と近い。
慣れない人は迷子になりそうな場所。
 
に、2年弱住んでいました。

いやあ、ホント怖かった。
毎回、金縛りの度に、此の話の女が首を締めてきました。
夏でも冬でも同じパターンでした。

何度も何度も起こるので、其の度に女の顔を見てやろう、と思うのですが、真っ赤な口紅以外覚えていないのです。

九州から地元に帰ってからも、偶に金縛りに遭いましたが、其の女は出て来ません。

其の数年後、住んでいた近辺で火災が起きたそうです。
詳しく色々聞いていくと、何如やら、あの近辺は昔、女郎屋的な物が有ったらしいので、若しかしたら、其の女の1人だったのかな、と思っています。

因みに、私は視える系の人ではありません。
寧ろ何も見えてない…



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