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小説の赤ちゃん

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日常を小さく切り取った紙切れ。
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SS:朝

SS:朝

玄関を開けると、今日はくもりのようだ。一人暮らしの家のしんと静まり返った世界にざわざわとした音がすべりこんでくる。

靴の踵を直して、歩き出す。

朝の空気を吸い込んで吐き出すだけで、昨日の自分からドロッとした何かが循環して、体の中が今日になっていくような感覚だ。

いつもと同じように家を出てすぐの角を曲がり、舗装された道をまっすぐに進む。まだ少し早い時間だからか人はほとんどおらず、時々車が横を通

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