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濡れても書ける紙と濡れても破れない紙と濡れても書けるペンに関する情報を整理する。

水害対策として考案した浮くノート「ウキウキノート」が2021年2月初旬にも一般発売されますが、筆記具との相性についてよくご質問をいただきますので、この機会にまとめてお答えします。実はユーザーさんの間で勘違いされている方も多い部分なのです。

水に強い紙と筆記具との相性

「ウキウキノート」は耐洗紙という紙で作られています。耐洗紙は、クリーニングタグに使われている紙で、水洗いやドライクリーニングにも耐えるということで、当然水に強靭ですが、素材としては紙100%ですので、筆記具との相性は普通紙のノートと全く同じです。

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(現在、耐洗紙は全部で9色あり、グレーは廃版です。通常は厚めのものがタグ用で流通していますが、ノートの中紙に使える特別なものは、共生社さんで白のみ在庫しています。)

つまり、染料系の水性インクペン(例えばエナージェルなど)で書いた場合は水に濡れれば滲みますが、一方同じ水性インクでも顔料ジェルインクペン(例えばサラサやジュースアップなど)なら、水に濡れても滲みません。

もちろん油性ペンや油性マーカー、鉛筆、墨汁などで書いた場合も、濡れてもまったく問題ありません。

ここで重要なのが、これは紙が乾いている状態で筆記し、その後水に浸かってどうなるのかという比較だということです。生活の中で考えると、普段ノートにいろいろな筆記具で書いていたものが、例えば洪水に遭ってしまい、水に浸かってしまったときに、筆記内容は消えるか消えないか?という検証ですね。

ちなみに、耐洗紙の特筆すべき点はそのタフさです。耐洗紙は、水を弾く紙ではありません。水に浸すと水を吸います。吸いますが、溶けません。水害に遭っても大丈夫というのはここです。

普通の紙なら、水に浸けた時点から崩壊が始まります。紙の基本性質は水に溶けることですので、紙のリサイクルでは製紙工場の大きな釜の中に紙と水を入れてかき回します。するとすぐに溶けてパルプに戻るんですね。

対して耐洗紙は、水を吸っても溶けずに組織を保ち続け、乾かせば(どうしてもごわつきはありますが)元通りのパリッとした紙になります。

以上が耐洗紙の特徴です。

そして、水に強い紙ということでもうひとつよく登場するのがユポです。ユポは選挙用紙として有名ですね。これは折り畳んでもその後自然にまっすぐに戻るというフィルムの性質を活かして、開票作業をスピードアップするという目的から来ています。(あの、選挙用紙に鉛筆で書くときの独特の書き味もいい感じですよね。)

ユポは成分的には樹脂フィルムですので、いわゆる紙ではないのですが、当然水に強く、油性ペンや鉛筆で書くことができます。しかし樹脂ということで、水性のインクは基本的にはじいてしまう傾向で、書きにくい(そして乾くのにかなり時間がかかる)のが特徴です。

さて、耐洗紙と同じく、これを水に浸したらどうなるかということですね。詳しく実験されていた方がいらっしゃいましたので、リンクさせていただきますが、まず油性ペンと鉛筆は問題なしです。

水性顔料ジェルインクは、程度はいろいろですが水に溶けだしてしまい、滲んでしまいます。これは、紙と違って表面がつるつるなため、顔料が固着していないのでしょう。

もちろん染料の水性インクは、完全に溶けだしてしまいます。そもそも弾いて書きにくいですが、書けたとしても、乾いてそこに染料が乗っかっているだけで、水に浸かれば瞬時に溶けてしまうわけですね。

ここまでが、ふたつの「水に強い紙」による筆記具との相性です。

水の中で書ける紙、水の中で書けるペン

そして、多くの方に誤解を招いてしまいがちなのが、耐洗紙のノートは「濡れていても書けるのか」ということです。水に強いことと、水の中で書けることは、別の性質なのですが、どうやらここがごっちゃになってしまうのです。

上に書きましたように、耐洗紙は水自体にはめっぽう強い紙ですが、素材的には普通に紙100%ですので、濡れているときは普通の紙のノートと同じで書きにくいです。

紙と筆記具は、基本的に紙の表面と筆記具との引っ掛かりによって黒鉛やインクが固着するのですが、水によってそれが滑ってしまうからだと思われます。また、水を吸い込んで柔らかくなることも、固着を阻害するようです。

一方、ユポは水の中でも鉛筆でガンガン書けます。不思議なことにむしろ水の中のほうが書きやすいと思うほど乗りもいいです。油性ペンでもそこそこ書けますが、これは相性があるようです。(太いボール径のほうが書きやすいなど)

ということで、「濡れている状態で書ける紙」はユポ一択なのかと思いきや、実はそうではないのです。

加圧式の油性ボールペンというのがペンメーカー各社から発売されています。(三菱=パワータンク、トンボ=エアプレス、パイロット=ダウンフォース、ゼブラ=ウェットニー
これは、ペンのインクを後ろから圧力で押し出す仕組みになっており、濡れている面でも、横や上向きに書いても大丈夫というものです。つまり無理やり紙にインクを押し付ける!という力技なんですね。

飲食店の伝票書きなど水場での筆記や、屋外でのタフな状況でも書き続けられるということで、取材記者の方や、建築現場などでの筆記を支えるペンです。

こういったペンをお使いいただければ、濡れている時、もしくは水中でも耐洗紙のノートに書いていただけます。何事も、大事なのは良い相棒ですね。

というわけで、共生社さんとのコラボで作っております、クリーニングペン(通称:落ちないペン)も、水性ジェルインクですので、書いた後は耐水性バッチリなのですが、濡れた紙には超書きにくいですのであしからず。

これ今、アジア各国からのご注文がすごく多いのですがなぜだろう。

コロナ禍でのノートと筆記具について

番外編として、コロナ禍でのノートと筆記具について少し書かせてください。どなたかのSNS投稿で、こんなことがアップされていました。

毎日手を消毒するので、手あれがひどく、ハンドクリームの使用量が増えた。そんな状況でノートに字を書いていると、クリームの油分が紙に染み込んで、ペンが書きにくくなって困る。

というような内容でした。確かに、水性のインクはもろに弾いてしまうでしょうし、油性ペンも滑りやすくなるという可能性があるかもですね。

もちろん程度問題ではありますが、ここで強いなぁと思ったのが、鉛筆やシャープです。インクではなく、黒鉛を紙の表面にこすりつけるという筆記具ですので、油とか関係なし。

ハンドクリームのせいでノートが書き辛くなっている方は、この機会に久しぶりに鉛筆を利用されてはいかがでしょうか。

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