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生まれて初めて浮世絵を買ったはなし

先日、生まれて初めて浮世絵を買った。

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名所江戸百景
「猿わか町よるの景」
歌川広重
(アダチ版画研究所 復刻浮世絵)

猿若町は、江戸三座と呼ばれた人気の劇場が一堂に会した芝居町。
華やかに賑わう通りの秋の夜の様子が描かれた1枚だ。

上野で開催中の浮世絵展「UKIYO-E 2020」で、1番好きだった作品。
浮世絵は庶民が楽しむために量産されていた版画なので、版によって刷られ方にバリエーションがある。展示されていたものは青が深くて吸い込まれるような月夜。コントラストが効いていて、お店からもれる灯りは本当に明るく光っているように見えて眩しかった。


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東京国立博物館所蔵


お芝居を見た帰り道、空には大きなお月さま。まだ興奮は冷めず、物語の余韻にひたっていたくて、帰りたくなくって…フラフラとそぞろ歩き。そんな気分のいい夜ってある。こんな時、いい月が出ていたら最高だよなぁ。夢見心地な夜のキラキラとした記憶が蘇るような1枚だった。


200年前に庶民がフルカラーの印刷物を気軽に楽しめたのは、世界中で日本だけなのだそう。そしてその作品は今見ても圧倒されるもの。江戸の人々が楽しんだのと同じ絵を見て興奮できたことが嬉しかった。

展示を一通り見終わった後にもう一度この絵の前に引き返してゆっくり眺めて、展示室をあとにした。名残惜しくって、グッズ売り場でせめてポストカードがあったら連れて帰りたいなぁと思うも置いておらず、無念。
仕方なく出ようとしたところで、出口そばアダチ版画さんが復刻浮世絵を展示販売しているのに出会った。

アダチ版画研究所
https://www.adachi-hanga.com
アダチ版画研究所は、浮世絵の制作技術を高度に継承した職人をかかえる唯一の版元。江戸時代の浮世絵を技術の基礎とし、現代のアーティストたちと新しい木版画の可能性を追求し続けています。

大量に見せてもらった生身の浮世絵は、ガラス張りの額縁越しより鮮やかで、「空摺(からずり=木の板でつけるエンボス加工)」の見事さも間近に見られてまた鼻息が荒くなる。
(実は興奮のあまり、猿わか町の他にあと2枚選びきれずお迎えした浮世絵がある。これはまた別の機会に自慢させてほしい)


思うように出歩けない今年の秋夜。
この絵を肴に思い出を反芻して愉しむのもオツかなと思っている。

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The UKIYO-E 2020
日本三大浮世絵コレクション
東京都美術館
会期:9/22まで
https://ukiyoe2020.exhn.jp

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浮世絵展を思いっきり満喫して帰ってきた私だけれど、実はほんの一年前まで浮世絵のうの字も知らない人間だった。(今でも全くもって詳しくはないのだけれど・・・)

和樂webという日本文化を広く面白がれる媒体で執筆させてもらうようになってから、浮世絵について記事や音声コンテンツで少しずつ触れる機会が増えていった。


noteのこのお話とかも、すごーく面白くて、浮世絵が身近に感じられるようになるのでぜひ読んでほしい。高尚で近づきがたい日本美術と思っていたら、江戸時代の人にとってはアイドルのブロマイドみたいなものだったり、ファッショントレンドを知るグラビア雑誌みたいな位置付けだったり(ジャンプ買うみたいな感覚でみんな買っていたんだって!)

幕府から発せられる贅沢禁止令による取り締まりに立ち向かう形で進化した技術があったり、洒落の効いた表現が生まれたり......民衆の熱が伝わってくるポップカルチャーだったことに驚いたのです。

老若男女が楽しんだ「春画」の話も面白かった!


浮世絵の歴史やどんなものだったのかを知ると、なかなかパンチが効いていて、もっと知りたくなってくる。そして色々な浮世絵を見始めると、全部同じ顔に見えていた美人画の顔の違いがわかるようになってきて自分の好みが見えてきたり、歌舞伎役者を描いたブロマイド的な浮世絵を見ると、現代受け継いでる方々と顔が似ててマジ親族やん!ってリアルにわかって面白かったり(市川團十郎さんや海老蔵さんの浮世絵見ると骨格がめっちゃ似てて衝撃受けるからぜひ!)、知らないことを知るって楽しいなぁってしみじみ思う機会となったのでした。
あと、大胆な構図に驚いたり、描かれた風景から醸し出されるその時代の空気を味わうのも好き。江戸の人々と同じものを眺めてるんだと思うとなんだかドキドキしてくる。

思いの外カジュアルに足を踏み入れられる浮世絵の世界。
もっと楽しんでいきたい。

※こっちのnoteは、こんなにカジュアルに買えちゃうんだ!!って衝撃だった。

こちらは、商品企画で携わらせてもらった江戸切子と浮世絵のコラボ作品。

企画スタート当初、本当にまるっきり浮世絵について分かってなくて、編集長に合うのでは?とオススメされた絵師・歌川国芳の作品を眺めては「すごいなぁ、かっこいいなぁ」しか言ってなかった。知らないって強い・・・。
でも、これが浮世絵が気になりまくり出したきっかけでもあったので、無知でも飛び込んでよかったなぁとも思っている。
浮世絵、面白いよ!!!

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