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九字を唱えた結果。怪談・逢魔が時物語「父の叱責」

父が他界した後、私と兄は毎月の月命日の法要を
欠かさず、住職に来てもらって続けている。

あれは新盆も終わった九月の終わり頃。

「もう少ししたら、またお坊さん来るんだよなぁ」

兄と夜中にそんな段取りの話をしてから
眠りについた。

ところが、久々の金縛りに襲われてしまう。
ここしばらく金縛りはなかったので、
けっこう強い呪縛を感じていた。

ただ、何度も遭っているので慣れもあった。
意外と冷静に金縛りに対処できていたと思う。

とりあえず、いつものように九字を唱えた。
私は金縛りに遭うと、心で九字を唱えると解ける。

しかし、今回に限って金縛りが解けない。
九字を唱え続けていると、逆に金縛りが強く
なって苦しいのだ。

息もしづらくなり、これには焦った。
額から嫌な汗が流れ、落ち着く努力をした。

そして、やっと思いついたのが正真偈だった。
すぐ唱え始めたら、徐々に体が楽になっていく。

やっと金縛りが解け、ほっとした時だった。
いきなり頭の中に、男の声が響いた。


『お前の父親が心配で来ているのに、
 九字を切るヤツがあるか!』

 
 親父の声だった。

(親父だったのか、すまなかった)
 私はびっくりして心の中で何度も謝った。



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