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「頭がいい」とはどういうことか ――脳科学から考える|読書メモ(3)

2章から4章までは、脳の機能について解説的な記述が続きます。「第2章 注意しなければ知覚できない」「第3章 脳の働きがいいとはどういうことか」「第4章 記憶という不思議な仕組み」となっています。

そのひとつひとつをとりあげるとただのネタバレ全開になってしまうので、かわりに、毛内先生がわたしたちに何を伝えようとしているのかを考えてみたいと思います。

何につけても、わたしたちは物事を二元論的に捉えがちです。

人生訓、金言、蔵言などの格言が好きな人は少なくありませんし、「こういう男はやめておけ」「こういう会社はブラックだ」「モテない女の特徴」といった見出しの記事がインプレを稼いでいるのは、今も昔も変わりません。

紋切り型には他者とのコミュニケーションを誘発する絶大な力があります。ですので、即座にそれを悪とカテゴライズすることはできないが、少なくとも科学の考え方からは最も遠いものであるということは、留意しておきたいところです。

例えば、恐怖について、わたしたちは経験則から「恐怖とはこういうものだー」とすぐに言いたくなります。

心理学や、文学、サブカルチャー、あまたの思想家たち(フロイト、パスカル、アウグスティヌス等々)が、恐怖について考えてきました。だから、わたしたちは、恐怖について多少なりとも知っているつもりになっている。

しかし脳科学では、恐怖という現象はあくまで脳内モデルの複雑な過程を経て最終的に発生するものと考えます。前者の態度が「本質主義」だとすれば、後者は「構築主義」と呼ぶことができます。

ひとつの物事を両極端に解釈してみるのも、科学的発想です。そしてその中間あたりに妥当なラインがあるのではないか?と探っていくわけです。これは、2章にとりあげられている、左右の脳を分離させた「分離脳」という(よく考えてみるとそうとうヤバい人体)実験の話に端的にあらわれている。

心理学の本なら、より単刀直入に、わかりやすく物事の”本質”を教えてくれるので、そのような記述に慣れている読者ほど、とくに2章から4章までは、知的勾配がきつく感じられるかもしれないなと思いました。

「頭のよさ」についても、構築主義的に分解して考えていく。そのための準備段階ということですね。

<続>


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