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鉄道写真とOM SYSTEM

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OM SYSTEMを知り尽くしているプロカメラマンが、性能や独自機能、その使いどころを分かりやすく解説します。機材の使いこなしや、追加機材の選択の大きなヒントになるでしょう。
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記事一覧

<連載>OM と旅する鉄道情景(第14回/牧野和人) GROUP K.T.R

魅惑の光景が誘う幾条もの線路が並ぶ区間を行く列車には幹線鉄道らしい風格が漂う。頻繁に 列車が行き交う様子を捉えるには、線路より離れた場所から架線柱等の障害物を避けて構図をつくるのが、安全に撮影を楽しむための方策だ。駅ホームの先端部では、駅へ向かって来る車両を正面勝ちに望むことができる場合が多い。 立ち位置は設置されている安全柵の内側等になる。 甲南山手は兵庫県下を通る東海道本線の駅である。乗降ホームは高架上に 1 面あり、複々線の中ほどを走る緩行線の電車が着発する。駅の周辺

<連載> 小竹直人・原初の鉄路風景 Vol.1 信越本線貨物支線

 私は10歳まで新潟市東区の大山町で過ごした。実家の玄関を開けた先には数本の煙突が聳え、常に煙が立ち上がりその風向きによっては妙な匂いがしていた。夜になれば煙突やその工場群はライトアップされ煌々と夜空を照らし、不気味な様相だったと記憶していた。今風にいうなら、“工場萌え~”的な光景だ。  その工場とは、焼島駅に隣接する北越製紙(現・北越紀州製紙)だった。かつて焼島駅から東新潟港駅(1.7㎞)まで貨物線があり、1998年11月まで貨物列車が運行されていた。その貨物線が実家の傍ら

<連載>OM と旅する鉄道情景(第13回/高屋 力) GROUP K.T.R

京都鉄道博物館で撮影する 生きた蒸気機関車京都鉄道博物館とは?  京都鉄道博物館はJR西日本が運営する鉄道博物館で、JR嵯峨野(山陰)線の梅小路京都西駅下車すぐにあります。元々は梅小路蒸気機関車館だった場所だけあって、蒸気機関車の展示が充実しています。鉄道ファンの間では「鉄博(テッパク)」と呼ばれ愛されていますね。  最近は閉館後に様々な夜間撮影会が開催されるようになり、普段撮影出来ない夜間の蒸機の撮影などが可能になっています。撮影する蒸機はその時々で形式が変わるので何回行

山下 大祐 超望遠ズームM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISで撮る鉄道写真

 望遠レンズをよく使う鉄道撮影に、さらに変化を与えてくれるのが超望遠の世界。望遠と超望遠の明確な境界はないが、35mm判換算400mm程度以上のレンズは、たいてい超望遠レンズと呼ばれる。このほどOM SYSTEMに加わったM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISは、35mm判換算300-1200mm。超望遠域が格段に広いことがわかるだろう。テレ端の600mmはOM SYSTEM最長の焦点距離だ。 この個性が立ったレンズを鉄道撮影で使うと

<連載>OM と旅する鉄道情景(第12回/高屋 力) GROUP K.T.R

OMで追いかけるJR西日本の新車 「273系 特急やくも」新型車両273系とは? JR西日本の273系は2024年4月6日にデビューした「特急やくも」用の新型車両です。岡山と出雲市間を伯備線経由で結んでいます。 伯備線は中国山地の山あいを走るためカーブが多く、今までは振り子機構を搭載した国鉄生まれの381系での運用でしたが、老朽化に伴い273系は開発されました。 273系も最新型の振り子機構を搭載し、乗り心地の向上などを果たしています。 湖西線での試運転を狙う この車両

<連載>OM と旅する鉄道情景(第11回/牧野 和人) GROUP K.T.R

今様東海道の富岳東海道の象徴日本一の峰、富士山は静岡県下を横断する東海道を彩る景色として、人馬が往来した街道華やかりし時代より象徴的な存在だ。鉄道沿線でも東海道本線や御殿場線等の車窓から麗姿を眺めることができる。東海道本線では新たな施設の設置や道路の開通等で失われていった名場面がある中、沼津駅の周辺には現在も列車の背景に秀峰を据えることができる場所が健在である。沼津市と駿東郡長泉町の境界となる黄瀬川(きせがわ)で東海道本線が川を渡る付近から上流方向を望むと、線路の背景に富士山

地方私鉄の旅 Vol.4/ 京葉臨海鉄道「旧 国鉄DD13形ディーゼル機関車も現役」

2023年11月千葉市・市原市の工場夜景ツアーに参加する機会があり、道中で見かけた貨物列車が気になったのがきっかけで、2023年12月と2024年1月に京葉臨海鉄道の撮影に出かけました。凸型のディーゼル機関車が牽引する貨物列車が魅力の京葉臨海鉄道、工場夜景との組み合わせで撮れるのか、2024年2月23日発売の「OM-1 Mark II」の新機能は活かせるか、などと期待を膨らませながら撮影に出かけました。 🔳 京葉臨海鉄道 京葉臨海鉄道は1962年11月20日、当時の国鉄と

山下 大祐 OM-1 MarkⅡ登場!鉄道写真の心技体

 いよいよ発売となったOM-1 MarkⅡ。OM SYSTEMの強みの一つであるコンピュテーショナルフォトグラフィーの新機能「ライブGND」を搭載して、また一歩“唯一無二”の存在感を強くした。 そこで今回は、OM-1 MarkⅡだからこそ挑戦できるような鉄道写真表現をテーマにしていきたい。執筆過程で感じたのは、OM-1 MarkⅡは鉄道写真の心技体とも言える要素を兼ね備えたカメラだということ。読み進めてもらえると、きっと読者の皆様にも共感していただけるだろう。 「ライブGN

<連載>OMと旅する鉄道情景(第10回/神谷 武志)GROUP K.T.R

夜の蒸機を撮るノウハウ【夜空を彩る大輪の花】夜の蒸機撮影の楽しみ東武鉄道でC11が走り始めて早や7年。 機関車不調という理由で運休になっていたC11 207が、北の大地を遠く離れた栃木県で元気よく走っているのにも驚きましたが、今やその姿はすっかり地元に定着し、日光・鬼怒川の欠かせない重要な観光資源になっています。 加えて冬季の楽しみは、ここで近年開催してくれるようになった「クリスマスの花火」。 観光振興を旗印に、地元の方々の多くの志が、冬の夜空に大輪の花を咲かせてくれました。

山下 大祐・OM-1 MarkⅡを生かす!シンガポールの鉄道シーン

 先代OM-1から早2年、OM SYSTEMの新フラッグシップ機が発売となった。ペンタ部に「OM SYSTEM」のロゴを誇らしげに掲げ、見た目にも期待が高まるモデルチェンジである。いつも国内の鉄道ばかり撮っている私も、このカメラの記事執筆のために気分一新。南国シンガポールでの撮影を試みた。  シンガポールはマレー半島の先端にある貿易・金融大国。鉄道は6路線の地下鉄(Mass Rapid Transit=MRT)が張り巡らされている。そのほか、いわゆる新交通システムが地域の足

<連載>OMと旅する鉄道情景(第9回/神谷 武志)GROUP K.T.R

「失われた鉄道情景」の美を求めて ~旧士幌線・タウシュベツ川橋梁に行く~ 水底深く眠る幻の鉄道橋 静かな山あいの温泉町・糠平郊外、ダム湖の対岸に、タウシュベツ川橋梁はあります。 士幌線は国鉄民営化直前の1987(昭和62)年3月23日に全線が廃止になりましたが、実はそれ以前の1955(昭和30)年8月、糠平ダムの完成にともない、誕生した糠平湖西岸へ一部線路を付け替えした歴史がありました。 この橋梁は、水底に沈んだ旧線にかかっていた鉄道橋。列車を支えることがなくなった70年

<連載>OM と旅する鉄道情景(第8回/高屋 力) GROUP K.T.R

記憶色を再現出来る「i-Finish」モードで被写体を鮮やかに 「i-Finish」モードとは? OM SYSTEMのカメラに搭載されている「i-Finish」モードは、前身のオリンパスが開発した記憶色を再現する撮影モードです。 開発時のテーマは「撮影時の感動を思い出せる写真が撮影できる」というもの。昔から特に青系統の色再現には定評があり「オリンパスブルー」なんて言葉もあるほど! 瀬戸内の貨物列車を狙う 山陽本線の有名撮影地である周防大島にかかる大島大橋。 この橋の上

<連載>OM と旅する鉄道情景(第7回/牧野 和人) GROUP K.T.R

重連の宴 蒸気機関車の里、山口線で待望の重連運転が実施された。 今回の主役はC57と本線走行用に再整備されたD51だ。 撮影で慣れ親しんだ山路へ向かう直線区間で列車を待つ。 汽笛二声。順光下の機関車は美しくも優しい表情である。 画面の中は程なく、吐き出された煙と蒸気に席捲された。 大型機関車同士の重連からほとばしる迫力を表現すべく、 望遠レンズを用いて画角を調整し、沿線の山深さを表現。 立ち上る煙は重なって、緊張感が漂う現場を盛り上げる。 圧縮された画面の中で列車はゆっく

<連載>OMと旅する鉄道情景(第6回/神谷 武志)GROUP K.T.R

輝く夜の電車区を撮る(その1) 地元で楽しむ「変化球の撮影」 東京の西部、多摩から埼玉にかけてネットワークを広げる西武鉄道。 神谷の地元は京王線・JR中央線のあたりなのですが、西武も準地元。高校も大学も、西武バスと西武電車に揺られて過ごした身近な交通機関です。 当然ながら神谷が学生だった遠い昔から、車両の顔ぶれは相当代わってしまいましたが、依然としてバリエーション豊かな形式の電車が次々やってくる楽しさは今も健在。そんな西武線を変化球で撮ってみようと、最近広角主体で出番が少