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鉄道写真とOM SYSTEM

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OM SYSTEMを知り尽くしているプロカメラマンが、性能や独自機能、その使いどころを分かりやすく解説します。機材の使いこなしや、追加機材の選択の大きなヒントになるでしょう。
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記事一覧

<連載>OM と旅する鉄道情景(第11回/牧野 和人) GROUP K.T.R

今様東海道の富岳東海道の象徴日本一の峰、富士山は静岡県下を横断する東海道を彩る景色として、人馬が往来した街道華やかりし時代より象徴的な存在だ。鉄道沿線でも東海道本線や御殿場線等の車窓から麗姿を眺めることができる。東海道本線では新たな施設の設置や道路の開通等で失われていった名場面がある中、沼津駅の周辺には現在も列車の背景に秀峰を据えることができる場所が健在である。沼津市と駿東郡長泉町の境界となる黄瀬川(きせがわ)で東海道本線が川を渡る付近から上流方向を望むと、線路の背景に富士山

地方私鉄の旅 Vol.4/ 京葉臨海鉄道「旧 国鉄DD13形ディーゼル機関車も現役」

2023年11月千葉市・市原市の工場夜景ツアーに参加する機会があり、道中で見かけた貨物列車が気になったのがきっかけで、2023年12月と2024年1月に京葉臨海鉄道の撮影に出かけました。凸型のディーゼル機関車が牽引する貨物列車が魅力の京葉臨海鉄道、工場夜景との組み合わせで撮れるのか、2024年2月23日発売の「OM-1 Mark II」の新機能は活かせるか、などと期待を膨らませながら撮影に出かけました。 🔳 京葉臨海鉄道 京葉臨海鉄道は1962年11月20日、当時の国鉄と

山下 大祐 OM-1 MarkⅡ登場!鉄道写真の心技体

 いよいよ発売となったOM-1 MarkⅡ。OM SYSTEMの強みの一つであるコンピュテーショナルフォトグラフィーの新機能「ライブGND」を搭載して、また一歩“唯一無二”の存在感を強くした。 そこで今回は、OM-1 MarkⅡだからこそ挑戦できるような鉄道写真表現をテーマにしていきたい。執筆過程で感じたのは、OM-1 MarkⅡは鉄道写真の心技体とも言える要素を兼ね備えたカメラだということ。読み進めてもらえると、きっと読者の皆様にも共感していただけるだろう。 「ライブGN

<連載>OMと旅する鉄道情景(第10回/神谷 武志)GROUP K.T.R

夜の蒸機を撮るノウハウ【夜空を彩る大輪の花】夜の蒸機撮影の楽しみ東武鉄道でC11が走り始めて早や7年。 機関車不調という理由で運休になっていたC11 207が、北の大地を遠く離れた栃木県で元気よく走っているのにも驚きましたが、今やその姿はすっかり地元に定着し、日光・鬼怒川の欠かせない重要な観光資源になっています。 加えて冬季の楽しみは、ここで近年開催してくれるようになった「クリスマスの花火」。 観光振興を旗印に、地元の方々の多くの志が、冬の夜空に大輪の花を咲かせてくれました。

山下 大祐・OM-1 MarkⅡを生かす!シンガポールの鉄道シーン

 先代OM-1から早2年、OM SYSTEMの新フラッグシップ機が発売となった。ペンタ部に「OM SYSTEM」のロゴを誇らしげに掲げ、見た目にも期待が高まるモデルチェンジである。いつも国内の鉄道ばかり撮っている私も、このカメラの記事執筆のために気分一新。南国シンガポールでの撮影を試みた。  シンガポールはマレー半島の先端にある貿易・金融大国。鉄道は6路線の地下鉄(Mass Rapid Transit=MRT)が張り巡らされている。そのほか、いわゆる新交通システムが地域の足

<連載>OMと旅する鉄道情景(第9回/神谷 武志)GROUP K.T.R

「失われた鉄道情景」の美を求めて ~旧士幌線・タウシュベツ川橋梁に行く~ 水底深く眠る幻の鉄道橋 静かな山あいの温泉町・糠平郊外、ダム湖の対岸に、タウシュベツ川橋梁はあります。 士幌線は国鉄民営化直前の1987(昭和62)年3月23日に全線が廃止になりましたが、実はそれ以前の1955(昭和30)年8月、糠平ダムの完成にともない、誕生した糠平湖西岸へ一部線路を付け替えした歴史がありました。 この橋梁は、水底に沈んだ旧線にかかっていた鉄道橋。列車を支えることがなくなった70年

<連載>OM と旅する鉄道情景(第8回/高屋 力) GROUP K.T.R

記憶色を再現出来る「i-Finish」モードで被写体を鮮やかに 「i-Finish」モードとは? OM SYSTEMのカメラに搭載されている「i-Finish」モードは、前身のオリンパスが開発した記憶色を再現する撮影モードです。 開発時のテーマは「撮影時の感動を思い出せる写真が撮影できる」というもの。昔から特に青系統の色再現には定評があり「オリンパスブルー」なんて言葉もあるほど! 瀬戸内の貨物列車を狙う 山陽本線の有名撮影地である周防大島にかかる大島大橋。 この橋の上

<連載>OM と旅する鉄道情景(第7回/牧野 和人) GROUP K.T.R

重連の宴 蒸気機関車の里、山口線で待望の重連運転が実施された。 今回の主役はC57と本線走行用に再整備されたD51だ。 撮影で慣れ親しんだ山路へ向かう直線区間で列車を待つ。 汽笛二声。順光下の機関車は美しくも優しい表情である。 画面の中は程なく、吐き出された煙と蒸気に席捲された。 大型機関車同士の重連からほとばしる迫力を表現すべく、 望遠レンズを用いて画角を調整し、沿線の山深さを表現。 立ち上る煙は重なって、緊張感が漂う現場を盛り上げる。 圧縮された画面の中で列車はゆっく

<連載>OMと旅する鉄道情景(第6回/神谷 武志)GROUP K.T.R

輝く夜の電車区を撮る(その1) 地元で楽しむ「変化球の撮影」 東京の西部、多摩から埼玉にかけてネットワークを広げる西武鉄道。 神谷の地元は京王線・JR中央線のあたりなのですが、西武も準地元。高校も大学も、西武バスと西武電車に揺られて過ごした身近な交通機関です。 当然ながら神谷が学生だった遠い昔から、車両の顔ぶれは相当代わってしまいましたが、依然としてバリエーション豊かな形式の電車が次々やってくる楽しさは今も健在。そんな西武線を変化球で撮ってみようと、最近広角主体で出番が少

<連載>OM と旅する鉄道情景(第5回/高屋 力) GROUP K.T.R

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO で夕刻を狙う ●M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROとは? M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO は、35mm換算300-800mmの超望遠ズームです。内蔵テレコンバータを使用すれば、1000mm相当。さらに外付けのx2テレコンを装着すれば、35mm換算20

<連載>OMと旅する鉄道情景(第4回/牧野 和人)GROUP K.T.R

磐越西線で陽光と対峙する  JR東日本 磐越西線では春から秋の間、土日祝日を中心にC57形蒸気機関車が専用の客車をけん引する「SLばんえつ物語」を新津~会津若松間で運行している。路線は阿賀野川の流れに育まれた豊かな自然が彩る西会津を通る。季節それぞれに沿線の魅力がある中で、日脚の短い秋には山間で光と影が交錯して印象的な眺めを紡ぎ出す。 刻々と表情を変える橋梁界隈  快晴で迎えた週末。午後の新潟行き「SLばんえつ物語」は、流れの上に架かる下部トラス橋梁が雄々しい一ノ戸川の

<連載>OMと旅する鉄道情景(第3回/牧野 和人)GROUP K.T.R

国鉄色の電車と森林浴 懐かしの車両で賑わう伯備線 鉄ちゃん(鉄道愛好家)の間で中国山地を縦断する伯備線がアツイ。特急「やくも」に使用されている元祖振り子式電車の381 系をはじめ、多くの営業列車が昭和中後期に製造された国鉄型車両で運転されてている。381 系は近々新型車両への置き換えが予定されており、同車の勇退を惜しむ意味合いを込め2022(令和4)年に1 編成が車体をクリーム色の地に赤い帯で装った国鉄特急色に再塗装され、原色塗装車が充当される列車はJR 西日本のホームペ

<連載>OM と旅する鉄道情景(第2回/高屋 力) GROUP K.T.R

北九州の隠れた名所「くろがね線」を訪ねて ●くろがね線とは? くろがね線とは、福岡県北九州市の日本製鉄が運営する専用鉄道です。 八幡地区と戸畑地区を結ぶ総延長およそ6kmの路線で、かつては複線でしたが、現在は輸送量も減り単線化されています。 JR 貨物や他の鉄道路線との運用上のつながりも無く、ここでしか見られないオリジナルの機関車や貨車が活躍しています。さらにここの路線は「時刻表」というものが存在せず(内部では存在はしているのかもしれないですが非公表のため)、いつ走るのか

小竹 直人・夏だ!! Tough TG-6で遊ぼう

2022年夏のロケでは、各地で発生した積乱雲を眺めながら蒸気機関車の煙と対比させようと思いつきました。雲の白のグラデーションと黒煙の黒のグラデーションの対比です。さらに、そのデータをモノクロ化していつかの展示作品にしようと考えたました。 この作品は、そうしたイメージから撮ったショットです。場所は磐越西線の山都付近の一ノ瀬橋梁で、言わずと知れた有名ポイントですね。さらに面白いショットを求めて翌週末もこの場所に立つ予定でした。ところが自宅を出る寸前に豪雨で山都喜多方間の鉄橋崩落