なぜサッカーには『ドラフト』がないのか?ー【オジサマ向け野球ファンのサッカー観戦講座】
10月11日(月)はプロ野球のドラフト(新人選手選択会議)です。
野球大好きのオジサマ世代にとってみれば、ビール飲みながら
「いい選手取れればいいなぁ。○○監督、くじ運いいのかね(・・?」
「え、球団社長がくじひくの?やめとけ( 一一)」
「昨年のドライチは伸びなかったから今シーズンは即戦力取ってくれよ。左の投手欲しいよね(*'ω'*)」
とTBS系列の地上波中継みながら至福の時を楽しめる1日なのでしょう。
その後のテレビのスポーツニュースをみながらドラフトの結果を再確認したあとに、サッカーネタが続いて「日本代表、ワールドカップ最終予選でサウジに負けて1勝2敗の黄信号!」というテロップ。
「あー、監督は森保さんだっけ?解任かぁ?」
と考えながら画面見ていると、ふと気がつきます。
「なんでサッカーはドラフトないの(・・?(・・?(・・?(・・?(・・?」
サッカーにはドラフトがありません。
現在日本代表の中心選手であるレアルマドリード所属の久保建英選手がJリーグの川崎に入団する際にドラフトがあった話なんて聞いたことないですし、
同じく代表の中心選手のPSVアイントホーフェン所属(オランダ)堂安律選手もJのガンバ大阪に入るときはガンバのユースチームからの昇格でした。ドラフトの「ド」の字もないです。
なぜサッカーには『ドラフト』がないのでしょう?
一言で言えば
野球は「戦力均衡」モデル
サッカーは「自由競争」モデル
これに尽きます。
野球を初めとするアメリカのプロスポーツは、プロスポーツを
「興業」
つまり
「見世物」
「エンターテインメント」
の1つと考えてます。
ですから日本の野球の巨人ような金のある強いチーム(いわゆるビッククラブ)があるとリーグ自体がつまらなくなってしまう。
だからそれは作らせないという「共存共栄」の発想です。
そのためにはチームの基礎となると新人選手の獲得は平等にしようね!ってことでくじで有望な新人選手を割り振るという方法です。
それに対してサッカーは違います。
プロスポーツは「興業」という面もありますけど、
むしろサッカーの盛んな地域、欧州ではサッカーは
「国・地域・都市間戦争」
の代わりという面もあります。
たとえば、スペインリーグの試合で名門FCバルセロナとこれまた名門レアルマドリーという、いわゆる「クラシコ」というリーグ戦の試合。
これがまるで「親の仇」を取るかのように憎しみをお互いぶつけてあれだけ盛り上がるのは、1930年代のスペイン内戦でマドリードのフランコ政権がバルセロナを徹底的に締め上げてバルセロナの言葉であるカタルーニャ語を使わせなかったりしたので、その恨み骨髄忘れまじ( 一一)ということでバルセロナはマドリッドに対して強烈な反抗心を燃やします。
それがあの「クラシコ」のスペインを2分するような大盛り上がりになるわけです。
そんなわけですから、こういう人たちにしてみれば、
「共存共栄?とんでもない!なんでそんなことしなきゃならねーんだ!
スポンサーで金集めていい選手とって、あいつらをぶっ倒すのが俺たちの義務だ。
そしてそれが金持っているヤツが強いってのが世の中の常だろ?
負けて悔しかったら金持っているスポンサー見つけて俺らよりいい選手や監督集めて俺らに勝ってみろ!」
という「自由競争」の意識が圧倒的です。
これがヨーロッパのサッカー界の普通の考え方であり、これが世界に広がっていったわけです。
ただしアメリカを除いて(^^;。
あと、他にも実務的な理由もあります。
野球はアメリカ・日本・韓国・台湾ぐらいしかプロのリーグがなくマーケットが小さいので、ドラフトも国単位でやれば大丈夫なのでしょう。
しかしサッカーの場合はどうか?
大多数の国にプロのサッカーリーグがあってクラブの数も1部だけで18から20くらいあります。国境を越えて選手を取りに来るのは普通のことです。
さらにサッカーの場合はマーケットが世界中ですので有望選手の数も世界レベルで考えたら半端ない数です。これを国際サッカー連盟(FIFA)主要国だけでも全部くじ引きしていたら数週間はかかります。
たとえば、先ほど述べた久保建英選手を18歳の段階でドラフトにかけるとなると、まあそれだけでも日本のみならず世界で相当数の「欲しい!」と入札に応募するクラブがありますよね。
それを、各国の有望選手で何十人もやったらどうなるか?もう収集がつかなくなりますし、だいたいくじを引くクラブの幹部を世界中から集めるだけでも大きなスタジアムが必要となってドラフトの「ワールドカップ」ができそうなくらいです(笑)。
つまり、マーケットの大きさが世界という桁の違いーこれがドラフトをサッカーで難しくしている理由なんですね。
もう一つは、育成システムの違いです。
サッカーの場合は各クラブで中学や高校生年代のジュニアユース・ユースチームを持っていて各クラブが小学生年代からトップチームまで一貫した指導方針の中で自前で選手を育てるというやり方が一般的です。
その中で使えそうな選手をトップチームに引き上げてプロ契約という形になります。
ですから海外では18歳に満たない16歳や17歳でもトップチームで使えるという選手がユース、あるいはジュニアユースの選手にいればプロ契約してトップチームに引き上げるという例はよくある話です。
そういうシステムの中に野球のプロとアマを分けてアマで育成をしてドラフトで平等に分配するというシステム自体、なじみにくいということは十分納得できますよね。
また、野球のドラフトの場合、契約金の高騰を防ぐという目的があります。
しかし、サッカーの場合は契約金がありません。あっても支度金という名目で500万円程度が上限です。
だから契約金の高騰という問題は生じないわけです。
まぁサッカーの場合は実際プレーしてみないと戦力として使える選手がどうかわからないのだから、野球の契約金のような大金を入団の時には払えないという考え方が普通です。
まとめてみると、
・野球の「戦力均衡」モデルとサッカーの「自由競争」モデルの違い
・野球とサッカーのマーケットの規模の違い-「国内」レベルと「国際」レベル
・野球の「プロ・アマ分離」育成システムとサッカーの「ユース主体」育成システムの違い
・野球とサッカーの契約金に対する考え方の違い
このような理由が、
「なぜサッカーには『ドラフト』がないのか?」
というオジサマ向け野球ファンへの解答となります。
サッカーにドラフトがないのにはそれなりに理由がありますね(^_-)-☆
楽しんでいただければ幸いです(^^)v。
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