3000文字チャレンジ!第91弾!【犬】
おっちゃんは犬が嫌いだ。
大学生になるまで、犬は恐怖の対象であり、トラウマであった。
注意深く犬を観察してみたことがある。
犬が危険な生き物、他人に迷惑をかけるのは、飼い主がシツケをしていないのが原因だと考えている。おおよそこの考えかたは間違っていないと思う。
このnoteでは、なぜ?犬が恐怖の対象になった出来事を書いていく。流血沙汰になるのでご注意くだされ。
小学生2年の夏休みにはいって、一週間ぐらいたったことだ。昼から同級生二人と、駄菓子屋に遊びにいく約束をしていた。
ソーメンを食べ終わってしばらくすると、家のチャイムがぴんぽ~んと鳴った。
駄菓子屋に遊びにいく約束をしていた、小太りの同級生が呼びにきてくれた。友人の身長は130~140cmほどで、おっちゃんの身長は110~120cmほどだったと思う。
遊びにいく3人のなかで、一番身長が高く、体重も重かった。彼のあだ名は丸◯ハムだった、問題がおこりそうなのでnoteではハム太とよぶことにする。
ハム男といっしょに、もう一人の友達の家にむかう。おっちゃんとハム太は自転車をもっておらず、徒歩で友達の家にむかった。小学2年生の足で20~30分かかり友達の家につく。
もう一人の友達の家は、芸能レポーターがよく使いそうな閑静(かんせい)な住宅街にあった。道路はキチンと整理され、京都市内のように碁盤目(ごばんめ)になっている。一軒一軒の敷地も20~40坪はあったと思う。
松の枝ぶりがみごとな和風の家があり、洋風のステンドグラスがはまっている家もあった。駐車している車もベンツやBMW、ボルボなど高級外車から「いつかはクラウン」(古い)日本の高級車も見られた。
お家見学していると、もう一人の友達の家に到着した。
白い洋風の家だ。チャイムをおすと、エプロンをしたお母さんが友達をよんでくれた。ほんわかした雰囲気で、タレ目の優しそうなお母さんだった。ハム太が「優しそうなお母さんでうらやましな」と言っていた。
もう一人の友達が家からでてくる、彼のあだ名は『ジョー』だった。名前が丈一や丈太郎、丈介のようにジョウがついてるから、あだ名が『ジョー』なのか?
答えはNOである。
赤塚不二夫先生のキャラクター『ハタ坊』に顔が似ているので、『ハタ坊』のセリフの「だジョー」から『ジョー』だけ抜きだされ、つけられたあだ名だった。ジョーの身長はおっちゃんと一緒ぐらいだった。
さて話をもどす、ジョー1人だけが自転車をもっており、自転車に乗ることができた。駄菓子屋に行くときも、ジョーは自転車に乗ってきた。
いよいよ駄菓子屋へ出発だ。「今日こそ『天地を喰らう』の2面までクリアしようぜ」とハム太が気合いをいれていた。
おっちゃんとハム太の歩く速度にあわせ、ジョーはノロノロと自転車を走らせていた。
ジョーの家をでて、まっすぐ100メートルほど進むと十字路があり、十字路を超えると、真っ直ぐな道が500メートルほどつづく。道の幅は3~4メートル、乗用車2台が余裕ですれ違える車幅だった。
道の両脇には、家がピッチリ建っていた。空地はなかったように思う。noteを書くために久しぶりに訪れてみると、空き家と空地が増えていた。
真っ直ぐな道を300~400メートル歩いたところ、ンン?道の真ん中に黒い塊が10~20ほど見える。長さは30cmほどで高さは20cmほどか?
なんだろうな?と3人で会話しながら、黒い塊に近づいていく。ホラー映画やパニック映画を見た今なら言える、間違いなく死亡フラグである。むかしの偉い人はいいました。「君子危うきに近寄らず」
黒い塊まで5メートルほどの距離に近づいたとき、ハム太が「犬だ」と言った。ジョーが「チワワ」という犬種だと説明してくれた。
犬といえば柴犬か雑種ぐらいしか知らなかったおっちゃんは、チワワをじ~と観察してみる。
毛が短くガリガリに見える体、小さい体のわりにスラっと長い足。体の色は、黒や茶色、白、灰色など色々な色をしていた。シッポの形状は覚えていない。
耳はピンとたっており、三角系の巨大な耳だった、耳より異様に感じたのがチワワの目だ。小さい顔にくらべ、やたらとデカい目。顔の三分の一は目だったのではないだろうか?宇宙人のグレイを想像した。
毛がない種類のチワワだったので、のっぺりした顔が宇宙人グレイにソックリだった。
口を見ると、犬歯をむきだしにして「グルゥゥゥゥッ」と威嚇(いかく)している??
チワワの群れがジワジワと我々に近づいてくる。道の端っこにいるチワワの前進がはやい。
上空から見ると、鶴(つる)が羽をひろげたように見える『鶴翼(かくよく)の陣』だ。
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□□□ ■■■ □□□ 白=チワワ、黒=おっちゃん達
このままでは包囲されてしまう。戦争の芸術とよばれたカンナエの戦いが再現される、ハンニバルの包囲殲滅作戦だ。ローマ人のように殲滅されてしまう。
囲まれる恐怖と、はじめて見たチワワの凶暴な顔に、おっちゃんは思考がSTOPしていた。
いち早く行動をおこしたのは、ハム太だった。パッと180度反転すると、猛烈な勢いでダッシュ。サモ・◯ン・キンポーばりの動けるぽっちゃり。
おっちゃんも、サモ・ハン・じゃない、ハム太につづき走って逃げ出した。人生で一番必死に走った、追いつかられたらヤラレル、チワワが追いかけてきてるか確認するヒマもない。とりあえずジョーの家に逃げ込めば助かると考えた。
後ろからガシャーンという音が聞こえた。「まって~、まって~、おいてかないで~」という声が聞こえた。
聞こえないふりをして全力で走った。
「イタイイタイ」という声が聞こえたときには、ハム太を追いぬいていた。
ジョーの家にたどりつきチャイムをおすと同時に、アルミの門扉を開け、勝手になかに入り、門扉を閉じた。
玄関からでてきたジョーのお母さんに、ジョーがチワワに襲われていると伝えると、ジョーのお母さんは、玄関にあったゴルフクラブを握りしめ走りだした。サンダルなのにスゴい速度で走っていった。
家の奥からでてきたジョーの祖父祖母にも事情を話すと、電話をかけだした。きっと警察か救急車に電話していたんだろうな。
門扉のスキマから、慎重にチワワがいないことを確認し、そ~っと外にでてみる。ジョーの家で待機していればいいのに野次馬根性丸出しだ。
ハム太はちかくの高い壁にのぼっていた。横に逃げずに、縦に逃げるとは賢いなと変に感心した記憶がある。
ハム太がのぼっている壁の下には、チワワが五匹ほどキャンキャン吠えている。そのころには近所の大人が家からワラワラとでてきて、ナウシカの巨人兵のごとくチワワを追い払っていた。
ゴルフクラブをぶんぶんと音がきこえるほど、ふりまわしいるジョーのお母さんが見えた。大人の女性2人がジョーを抱きかかえているのが見えた。女性2人はジョーを、ジョーの家に運びこんだ。
ジョーは目の上を切られ、血がダクダクと流れ目にはいり、目を開けられないようだ。手や足には細かい傷が多数ついている。
ジョーの祖母がジョーを消毒液とハンカチをつかい、血を洗い流しているうちに、サイレンが聞こえてきた。
ジョーは救急車にのせられ、祖母につきそわれ病院にいった。ジョーは1週間ほど入院したと記憶しているが、入院期間はシッカリ覚えていない。
その後、警察にハム太と一緒に10分ほど質問された。連絡があったのか爺ちゃんが迎えにきてくれ、家にかえった。
その日の夜、逃げ切れなったら、おっちゃんが血まみれになったのかと、ゾッとしてなかなか寝つけなかった。
翌日、学校でも教師や友人にいろいろ尋ねられた。逃げるから悪いんだよと責めたやつもいたが、逃げるしかね~よ。牙をむいたチワワに囲まれてみろよ。「どうする、ア◯フル」の犬でも10匹~20匹あつまったら狂気しかかんじね~よ。
夕方、家にジョーの両親が挨拶にきた、ジョーを見捨てたことを責められるかと考えていたが、危険をしらせてくれて「ありがとう」と感謝され、嬉しいやら、後ろめたいやら複雑な感情になった。
両親とジョーの両親は、1~2時間ほど話し合っていた。
あとから聞いた話では、チワワを繁殖させ売っていた家の檻がこわれ、チワワが逃げ出した現場に3人はでくわしたそうだ。ほんとに運がわるい。
チワワの飼い主は、チワワの鳴き声やフン、臭いなど問題をおこしていたそうだ。どのような取り決めをしたのか分からないが、チワワ飼育をやめ、しばらくしてチワワの飼い主は引っ越していったそうだ。
ジョーも1年後、転校していった。逃げた罪悪感から、あまり遊ばなくなっていた。
チワワの飼い主の元家は空地に、ジョーの家は空き家になっている。
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