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夜、部屋にナニかいる、それが飛んだ

◯月×日

23:00 

貯まっていたパソコンでの作業を終わらせる。目がジワジワと視覚神経の細い線がじりじりと燃えるように痛み、眼球から悪魔のビームがでそうなぐらい熱く痛い。

今日は梅雨の中休み、湿度はじめじめムシムシと高く、昼間の気温は28℃近くと真夏日だった。まだ◯月だぜ。

冷たいシャワーをあび、べっとりした中年の脂ギッシュな汗を洗いながす。キンキンに冷えたビールを飲みやっと生き返った気がした。明日の仕事のメールチェックをし、照明につながっている部屋の中央、プラプラとしている白い細い線をひき電気を落とし、うすい布団にもぐりこんだ。

シャワーを浴びたばかりだというのに、体の表面にはうっすらと汗の粘液がニチャ~とまとわりつきだしてきた。おまけに昼間から夜まで酷使していた目はガンガンと熱を発している。

右肩を布団に90度にたてる。しばらくしてから左肩を布団に90度にたてる。ポジションがさだまらない、今日は長期戦になるなと考えた。

ゴロゴロしていると、部屋の隅っこ、一番闇の濃いところで、ナニかがふわッと動いた気がする。飛蚊症の模様かと思ったが、右肩を布団に90度にたてたときにだけに、ナニかが陰惨な隅っこにいる気がする。気配がする。コチラを見ている気がする。

ナニかの息づかいが聴こえるようだ。そしてソコにいる。耳をすましてみるが、部屋の中は静寂、静謐、音はまったくしない。わたしの、心音と鼻からだす呼吸以外は。

注射の打たれるときは、針の先を見るかい?目を背けるかい?

わたしは、針の先を見つめる派だ。ナニがいるか確かめよう。

布団からゆっくりコソっとスネークのように立ちあがる。ナニかの動く気配はない。危害をくわえる気はないのか?

照明の白い細い線をスッとひく、パッと一瞬で部屋が白いLEDの光の領域にきりかわる。

瞬間、黒い物体が音もなく下に飛び、上に飛び、斜めに飛ぶ。グルグルと円を描き、360度上下左右関係なくナニかが飛びまわる。

なんだなんだ、起こったことがわからず、体がかたまる。状況がわからない。ひたすら畏縮、恐慌、震撼、部屋の中央で石像のようにたちつくす。その石像のまわりを狂ったように飛びまわるナニか。

獲物にむらがる肉食動物か、巣を壊されたハチのようだが、襲ってくる気配はなし、部屋の壁にもナニかはぶつからない。

すこしずつ落ち着いてきた。ナニを注意深くよく見る。羽をひろげ飛びまわっているが、羽音はしない。羽の先から羽の先までは30cmはありそうだと観察する。

わたしの目線がナニかを中央にとらえた。ヒッと恐怖を覚える醜悪なブタをペチャっさせた顔、ピンとたった小さい耳、飛びかかるように拡げた翼は、翼竜のプテラノドンのような翼だった。

これはゴッサムシティーにいるヒーローのマークですわ。それか、コウモリさん助けて、というと、パンツとマントだけのスティックをもった黄金骸骨があらわれるやつですわ。分からない人はお父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃんに聞いてみようね。フハハハハ。

さて、どうするか。部屋の窓をあけ、コウモリがでていくか試してみようと白い薄地のカーテンをめくったところ。

網戸から窓まで、オープンウェルカム無防備な状態であけたままだった。

今日部屋があつかったので、窓をあけたのをスッカリ忘れていた。

街頭がマダラに照らす街に、音もなくスルりと部屋からコウモリは滑りでた。

窓はしめましょうね。

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