しましまシャツの謎:パントマイム、ラグビー、そして囚人服
こんにちは、芸能事務所トゥインクルコーポレーション所属、パントマイムアーティストの織辺真智子です。
今日は、しましまのシャツ、いわゆるボーダーシャツについて語っていきたいと思います。
パントマイムと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、横のしましま、白と黒、太めのボーダーシャツを着た白塗りの人ではないでしょうか。
あれ、なんでしましまなの? そこまで思う人は少ないかもしれませんが、なんでしましまなんでしょう。
ただ、「しましまのシャツ」だけで思い浮かぶ代表的な人々だと、もしかしたら「ラガーマン」そして「海外映画に出てくる囚人」じゃないかなと思います。
あの人たちも、なんでしましまなの・・・?仲間?
パントマイムの衣装、ラグビーのシャツ、そして囚人服に使われるしましまシャツ。調べてみたら、全然関係ない成り立ちでしたが、それぞれ興味深い背景があったので、ぜひみなさんと分かち合いたいと思います。
面白キャラになっちゃうよ!パントマイムのしましまシャツ
パントマイムの縞模様衣装の起源は、16世紀イタリアの「コメディア・デッラルテ」にまで遡ります。この演劇形式では、ザンニ(召使い)と呼ばれる登場人物が鮮やかな色彩と模様の衣装を着ており、その中に縞模様も含まれていました。これらの特徴的な衣装は、観客が登場人物の役割や性格を一目で理解するのに役立ちました。
18世紀初頭、パントマイムがイギリスで発展する過程で、コメディア・デッラルテの要素が取り入れられました。特に、アルレッキーノというキャラクターは、その色とりどりのパッチワーク衣装で知られ、しましま模様を含む大胆な模様の使用がパントマイムの伝統となりました。
その伝統と、コミカルな視覚的魅力が、親しみやすいキャラクター表現につながり、パントマイムの人といえばしましまシャツが多くの人にしっくりくるということになっているのだと思われます。
しましまシャツ買いづらい
ただ、私自身は正直なところ、あまり好きではありません・・・個人的に、あんまりボーダーの服を着ないのです。黒と白の縞模様のシャツは引っ越しを機に処分してしまい、今は赤い縞模様の1着しか持っていません。
しかし、仕事で指定されれば新たに購入しなければならないのが現実です。21世紀の日本の服屋さんでこのような太い縞模様のTシャツを見つけるのは意外と難しいものです。襟付きのラガーシャツ、細い縞模様のTシャツは多く見かけますが、パントマイムに適した太い縞模様のものとなると、意外と見つけるのに苦労することがあるのが現状です。
できるだけ買わなくて済みますように・・・!(必要だったら買うけどね)
さて、パントマイムのしましまシャツは「コメディ」な感じですが、対してラグビーのシャツは同じしましまでも「強そう」「格好いい」ですよね。
どうしてラガーシャツはボーダーなのか、調べてみましたよ〜!
視覚的錯覚で強さを表現!ラグビーのしましま
ラグビーシャツの特徴的な横縞、通称「フープ」には、興味深い歴史的背景と実用的な理由が隠されています。
ラグビーの黎明期、チームのユニフォームは主に白いシャツだったそう。しかし、スポーツが発展し、競技人口が増えるにつれ、チーム間の区別がつきにくくなりました。そこで、チームの独自性やアイデンティティを示すため、色付きのシャツが採用されるようになりました。この変化は、単なる美的な選択ではなく、試合運営や観戦の利便性を高めるための重要な進化でした。
19世紀後半、ラグビーとサッカーが別々のスポーツとして確立される過程で、両者の視覚的な差別化が必要となりました。この時、ラグビークラブは横縞を、サッカークラブは縦縞を採用するという興味深い選択をしました。この決定は、単に見た目の違いを作り出すだけでなく、それぞれのスポーツの個性や特徴を表現する上で重要な役割を果たしました。
横縞の採用には実用的な理由もありました。まず、視覚的な効果として、横縞は選手の体型、特に幅を強調する傾向があります。接触プレーの多いラグビーにおいて、この視覚的錯覚は相手チームに対する心理的な威圧感を与える可能性があると考えられました。選手がより大きく、強力に見えることで、試合前から有利な印象を与えることができたのです。
さらに、製造技術の観点からも横縞には利点がありました。当時の織技術では、横縞のデザインの方が生産しやすく、また耐久性も高かったのです。対照的に、縦縞のデザインは布地を切って縫い合わせる必要があり、激しいタックルや引っ張りの多いラグビーのプレーでは破れやすい傾向がありました。つまり、横縞の採用は、ユニフォームの寿命を延ばし、チームの経済的負担を軽減する効果もあったのです。
このように、ラグビーシャツの横縞は、スポーツの歴史的な発展過程と実用的な必要性が見事に融合した結果と言えます。単なるデザインの選択を超えて、競技の特性、チームの個性、そして技術的な制約が絡み合って生まれた、ラグビーならではの伝統なのです。現代のラグビーファンが愛着を持つこの横縞デザインには、スポーツの進化と工夫の歴史が凝縮されているのです。
さて、とあるディズニー映画の影響か、小さい子に「パントマイムの人は囚人なの?」とたまに誤解されています。どうして海外の囚人はしましまなのか。パントマイムの人が悪いことをしたのか。いいえ、そうではありません。
脱獄したらすぐわかっちゃう!? 屈辱のしましま
囚人服の縞模様は、単なるデザインの選択を超えた深い歴史と意味を持っています。その起源は19世紀、特に1820年代のニューヨーク州オーバーン刑務所システムにまで遡ります。この特徴的な服装が採用された主な理由は、囚人の識別を容易にするためでした。
黒と白の鮮明な縞模様は、囚人を一目で見分けられるように設計されました。この高い視認性は、特に脱獄事件の際に重要な役割を果たしました。逃亡した囚人を迅速に発見し、捕捉することができるよう、この目立つデザインが選ばれたのです。
さらに、この独特の服装には強力な抑止力としての機能もありました。囚人が一般市民の中に紛れ込むことを極めて困難にすることで、脱獄を思いとどまらせる効果があったのです。刑務所の外での作業や移送時にも、囚人の監視を容易にする役割を果たしました。
しかし、縞模様の囚人服の意味は、単なる実用性にとどまりません。そこには深い象徴的意味も込められていました。まず、縞模様は刑務所の鉄格子を視覚的に表現しており、着用者の自由の喪失と刑罰の概念を強く印象付けました。囚人たちは、服を着ている間中、常に自分の状況を意識させられることになったのです。
また、この特徴的な服装には「烙印効果」もありました。縞模様の服を着ることで、その人物が犯罪者であることが一目瞭然となり、刑罰制度内での彼らの地位が明確に示されました。これは、社会から隔離されているという現実を、視覚的に強調する役割を果たしたのです。
時代の変遷とともに、囚人服のデザインも進化を遂げました。20世紀中頃になると、多くの刑務所が縞模様から単色のジャンプスーツへと移行しました。現在でもよく目にする鮮やかなオレンジ色の囚人服は、この時期に広まったものです。この変更は、より人道的な処遇への移行や、囚人の尊厳に対する配慮の表れとも言えるでしょう。
しかし興味深いことに、近年では一部の刑務所施設で縞模様の制服が復活しています。これには、歴史的な意義を再認識する動きや、囚人の明確な識別の必要性が再び高まっていることなどが背景にあります。また、メディアでの描写を通じて、縞模様の囚人服が一種の文化的アイコンとなっていることも、この傾向に影響しているかもしれません。
このように、囚人服の縞模様には、実用性、象徴性、そして時代の変遷が凝縮されています。それは単なる服装を超えて、刑罰制度の歴史と社会の価値観の変化を反映する鏡となっているのです。
それぞれの、しましまシャツ物語:笑いと個性と社会の記憶
パントマイム、ラグビー、そして囚人服。一見全く関係のないこれらの分野で使われる縞模様には、それぞれ独自の歴史と意味が織り込まれています。パントマイムの舞台では観客の笑いを誘い、ラグビー場ではスポーツの個性を鮮やかに表現し、刑務所では識別と戒めの象徴として機能してきました。
これらの意外なエピソードは、私たちが日常で何気なく目にする縞模様に、実は深い意味や豊かな歴史が隠されていることを教えてくれます。縞模様は単なる視覚的な装飾を超えて、文化の表現、スポーツの伝統、そして社会制度の中で重要な役割を担ってきたのです。
次に映画や舞台、スポーツ中継などでしましまシャツを目にしたとき、ぜひこれらの興味深いストーリーを思い出してみてくださいね!