コロナ禍でのAIH通院

先生は迷っていた。パソコンに映る本日の血液検査の結果を見ながら考えていた。

今日の先生はマスクに加えて頑丈なゴーグルをつけていた。病院の入り口は消毒液の前に人が並び、入ってすぐに発熱外来の案内も出ていた。病院の中でコロナへの意識が強くなっていることを瞬時に悟った。

前回の検診で自己免疫性肝炎と診断されつつも、入院してステロイドで治療するという通常の治療ができず、ウルソ100*2錠*3回/日=600を試した結果はこんな感じだった。

総ビリルビン: 1.1
AST(GOT): 90H
ALT(GPT): 188H
ALP: 289
LDH: 153
γGTP:47H

IgA: 149
IgG: 1857
IgM: 183

ALBIスコア: 検査ナシ → -2.56
ALBI grade: 2a

最初よりはかなり数値は落ちてきている。ただまだ落ち着いているとは言えない状態だった。先生は言う。

「ウルソは最大900まで増やすこともできる。それがダメならステロイドだね」と。

ステロイドを始める時は入院させたい。先生の言葉の節々にそんな思いを感じた。副作用も大きいと言われる薬なだけに、最初は適切な量を見極めるための責任なのかもしれない。しかし今、ベットを私に用意することはできないというジレンマも表情に見受けられた。

「ステロイドを試してみることもできるけど……」

先生はやっぱりためらっていた。私もステロイドを不安な状態で始めることには戸惑いがある。

私たちの結論は、ウルソを900(=ウルソ100*3錠*3回/日)で試してみるということ以外見つからなかった。あと1か月、ウルソに託してみることにした。部屋を出る時先生に言われた。

「おうちにいてくださいね。」と。

入院、ステロイド、コロナ、免疫…いろんな迷いが私の中を駆け巡る。何が一番いい選択なのかわからない。でも今はたぶんこれしか選択肢はなかったのは間違いない。

会社の産業医さんや伊藤病院をはじめとしたほかの病院で、自己免疫性肝炎(AIH)と診断された旨を言うと必ず薬を確認される。

「ウルソを飲んでます」というと、ステロイドじゃないことに驚かれる。そう、この病気はステロイドで治す病気だ。しかし、今私はその治療ができないでいる。全てはコロナのために病床を確保するためだ。今を乗り切るため。未来を乗り切れるかは誰もわからない。

帰宅した私は、大好きなエレクトロスイングの曲をBGMに手を洗ってソファーに座った。


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