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はま寿司の「はまい!」は言語学的にどう説明できるか

私がよく行く回転ずしチェーン店、「はま寿司」。

「スシロー」も「くら寿司」も行かないことはないが、近所で車が停めやすい、という理由で「はま寿司」は月1回くらい行っている。

ある日、はま寿司の店内にこのようなPOPが置いてあるのに気が付いた。


画像は「はま寿司」HPより転載


はまい!


大きなフォントで書かれた3文字。

なんとなく気になった。興味をそそられた。

そんな日本語ってありなのか?

そもそも「はまい」とはどういう意味なんだろう?

今日は、このおもしろい新造語を取り上げてみたい。


「はまい」の公式説明

まず、はま寿司が公式に出している「はまい」の説明をみてみたい。

「はまい!」それは、
「はまのおいしさそのままに、うまい!」という意味のおいしい新語。
たとえば、まぐろは天然だから、はまい!
まだい、ぶりは活〆だから、はまい!
これからも「はまい!」寿司のために
進化するはま寿司に、ご期待ください。

はま寿司のPOP引用

なるほど。

はまのおいしさそのままに、うま!」という意味だという。
(はま=はま寿司)

つまり「はま」+「うまい」
  →「はまうまい」
  →「はまい」
とつながっているようだ。


「はまい」は属性形容詞・イ形容詞

ではここで、いったん品詞の確認をしてみたい。

形容詞は大きく分けて「感情・感覚形容詞」と「属性形容詞」がある。

感情​・感覚​形容詞
主名詞の感情を表す形容詞のこと。
例)嬉しい、寂しい

属性形容詞
主名詞の形状や性質​など​を表す形容詞のこと。
例)大きい、小さい

「はまい」は感情を表すものでなく、「はまのおいしさそのままに、うまい」という性質を表すので「属性形容詞」であるといえる。

また、「はまい」は、「い」で終わるので「イ形容詞」であり、活用形は「うまい」「大きい」などと同じである。

イ形容詞「はまい」の変化
(肯定形以外は誰も使わないと思うが…)

はま (肯定形) 
はまくない (否定形)
はまかった (過去・肯定形)
はまくなかった (過去・否定形)
はまくて (て形) 
はま (副詞用法の形)



「はまい」と「うまい」の意味範疇について

品詞の意味を確認したところで、「はまい」の意味範疇を考察してみたい。

公式説明で「はまのおいしさそのままに、うまい!」とあったように、「はまい」と「うまい」は意味が違うようだ。

まったく意味が異なるのではなく、意味の範疇が違うという意味である。

「うまい」という大きなカテゴリーに、はま寿司のそのままのうまさを意味する「はまい」が内蔵されている。

図にするとこんな感じだろうか。


ここでもういちど公式表現を見てみる。例えに注目したい。

たとえば、まぐろは天然だから、はまい!
まだい、ぶりは活〆だから、はまい!

これによると、「まぐろは天然」「ぶりは活〆」という「はまのおいしさそのまま」の特徴が含まれているから「はまい」という。

言い換えれば、はま寿司特有のこだわりやオリジナリティがあり、かつうまいものが「はまい」ということだろう。

はま寿司(会社:ゼンショーホールディングス)は、なかなか面白い新語を作ったものだ。

余談だが、調べたところ2021年6月に「はまい!」スローガンを使用開始し、同時にブランドアンバサダーに女優の川口春奈さんを起用したとのこと。
この新たなスローガンの定着率はどれくらいなのだろう。
個人的に、とても興味深いと思った。


おわりに

今回は回転ずしチェーン店「はま寿司」のスローガン「はまい」という表現を言語学的に考察してみた。

新造語は「ググる」「エモい」「チルい」などいろいろ表現があるが、誰かが使い始めいつの間にか広く浸透されるようになったパターンが多いと思う。

だが、この「はまい」ははま寿司が「意図的に」「仕掛けて」作った新造語である。

はま寿司のPR戦略の一環だと思うが、このように新造語を作りだせるというのは興味深い。

以上、お読みくださりありがとうございました。



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