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フォロワー800人到達記念作品 800文字ショートショート『Y字路に佇む家』

坂道を登りきると見えてきた。私の散歩コースである。

その土地は、高台に佇む海が一望でき、とても素晴らしい立地だ。家主もきっとこの風光明媚な景色が気に入り、ここに家を建てたのだろう。

水色がかった板張りの外壁には、ツタがからまりレトロさを醸し出している。更に、二階建ての一階は吹き抜けのガレージとなっていて、なんともお洒落な家だ。

スケッチブックを広げて絵の具を使い、お洒落を描いたような家だ。

しかし、その家はY字路のど真ん中に建っている。

ケーキを6等分に切り、そのまま皿に取り分けたような形だ。

私は、インテリアデザイナーの資格を持っている。昔から自分の部屋のソファーやベッドを動かしては、あーでもない、こーでもないと考えている時間が好きだった。そして、部屋の隅にテトリスの要領で、家具が並んだ時にはエクスタシーを感じていた。

そこでだ。この家の間取りの角の部分は、一体、どうなっているのか?そう考えだすと、毎回散歩どころではない。

愛犬のリードを握りしめて、今日も見上げていた。

おやっ?

今日は珍しく玄関が開いていた。

一階はガレージだとして、二階のこの六等分に切り分けた60度の空間に、家主は何を置いているのか?

私は、想像を膨らませて、考えて、考えて、また考えた。

(書斎か?机を置いて扇状に部屋を見渡す。はたまた、無難にリビングとなっていて、観葉植物でも置いているのか?)

気が付くと、私は玄関の中に足を踏み入れていた。

(イカン、イカン。これでは、不法侵入ではないか・・・)

そう思いながらも、三和土に膝を置いて身を乗り出し、家の中を覗いていた。

(ゴクリっ)

息を飲みながらも、少しだけならと欲望のままに目の前にある階段の手摺に手を掛ける。

(ギシッ、ギシッ)

きしむ階段の音を抑え気味に登り上り、恐る恐る目の前の扉を開いた。

そして

(ガッチャ)



部屋の中には何も無かった。

「なんだよ」

肩透かしにあった気分だった。

しかし・・・(800文字)


ーーー続く

※フォロー800人ありがとう御座います。800文字にまとめる予定でしたが、気持ちが乗り長編となりそうです。次回は900人達成時に900文字で書き上げたいと思っております。

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