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永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」感想~裏方さんがいて演者がいて幕があがる~

最近、一家心中を図った?世間を騒がせている歌舞伎俳優さん。

一連の流れが、謎が謎を呼ぶミステリーのようで...。

そして歌舞伎といえば、私の中では伝統芸能で敷居が高いイメージなのだが、江戸時代の歌舞伎芝居小屋は「悪所」と呼ばれていたようだ。

本書は、まだまだ敷居が高くない芝居小屋時代のお話。

そしてこちらも謎が謎を呼ぶミステリーの展開になり驚くのだが、最後は優しい気持ちで読み終えることができる。

時代ものに慣れていない私でも読みやすくて、面白かったーー!
最高の舞台を私も観させてもらった。
第36回山本周五郎賞受賞も納得🎊

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。


忠臣蔵などで有名な仇討ち。

仇討ちって恨みを晴らしたい!だからといって勝手に行ってはダメなんだね。

そもそも仇討ちは私怨を晴らすことではない。お上に届を出して、それを成し遂げなけれ国に帰ることさえ叶わぬ厳しい道である。(本文より)


はじめて知ったYO!

仇討ちなんてしたくない者にとっては、届を出しちゃったら成し遂げなければ終わらないなんて苦痛でしかないわ。

この菊之助もその一人でね。
仇討ち相手を殺したいわけではないが、お家のため母のために、
仇討ち相手を探しに芝居小屋にやってきて生活をはじめる。

国に帰るために仇討ちを成し遂げなければならない。
見事に成し遂げた菊之助。

どうやって仇討ちを成し遂げたのか、芝居小屋関係者によるインタビュー形式で語っていく。

🌺🌺

なんでもそうだけど、表に立つ人だけで成り立っているのではない。
裏方さんがいて演者がいて幕があがる。


・芝居小屋の前で入ろうかと迷っているお客相手に芝居の見所や面白さを伝える「木戸芸者」さん。

・芝居の中で戦いを場を演じるに当たり、役者たちに振りをつける元浪人の「立師」さん。

・女形の端役もやりつつ楽屋で衣装の繕い者をする「衣装係」さん。

・ああ、うん、しか言わないってんで阿吽の久蔵と呼ばれる芝居の小道具を作る「小道具」さん。

・元旗本の次男坊の「戯作者」さん。

裏方である木戸芸者さんにも、立師さんにも、衣装係さんにも、小道具さんにも、戯作者さんにも、芝居小屋に流れ着いた理由があってね。

紆余曲折の人生って、こういうことを言うのだかな...と、読み手を物語に誘う上手さ。
小道具の阿吽の久蔵さんの話なんて泣けたもん。

幕があがるためには演者もいる。

その演者は誰なのかは、是非読んで確かめてみてほしい(⋈◍>◡<◍)。✧♡


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