武田惇志 伊藤亜衣「ある行旅死亡人の物語」感想~現金3400万円を残し孤独死した女性と対話する一冊~
本とおしゃべりする。
私は、読んでとき本と対話してる。
といっても、ほぼ聞き役だけどね( ˙˙ ; )
ダメだよー!よかったね♡志村うしろ的になり叫んだり...合いの手を入れてる。
今回は、ある一人の女性の人生が書かれた本書ともおしゃべりしてみた。
読了後、現金3400万円を残し孤独死した身元不明の女性は、誰とおしゃべりしていたんだろうと、ぼんやり考えた一冊。
SNSで話題になっていたので本書のルポのことは聞きかじり、興味あったので詳しく知りたくて手に取る。
はじめて知る、
タイトルにもなっている『行旅死亡人<こうりょしぼうにん>』
病気や行き倒れ、自殺等で亡くなり、名前や住所まど身元が判明せず、引き取り人不明の死者を表す法律用語のようだ。
著者(記者)がネタに困って行旅死亡人をデータベースを検索すると、右手指全て欠損し現金3400万円を超える現金を所持して推定年齢77歳の女性に興味を持ち調べることに。
40年近く前に契約したアパートの名義は男性。
でも男性の姿を見た者はいない。
労災事故で右手指を失くすも、労災保険を断り、年金を受け取らなかったり、最近の自分の写真もない。携帯電話もない。留守番電話もない。古いプッシュ式の電話が一台あるだけ。生きているあいだ電話はかけた形跡なし。
小説や映像になりそうなミステリーな女性の暮らしぶり。
身元を隠そうと生きていたように思われるのだが...。
彼女は、どうしてひっそりを人目を忍んで生きてきたのか?
ミステリーのような彼女の人生に、私が期待するようなすっきりとした解決はない。
だからこそ、彼女と対話する。
彼女の部屋に置かれたベビーベットで眠る犬🐶のぬいぐるみの名は「たなかたん」くん。
人目を避け暮らす彼女は、たなかたんくんとどのような会話をしていたのだろう?
彼女を守り続けたたなかたんくんの写真がせつない。
そして社会に足跡を残さずに生きようとしてたはずの彼女にも、ちゃんと生きた足跡が残っている。
それを見届け、会話する。
ひとりで生きていかなきゃと思っていたけど、ひとりではない。
誰かが私のことを知っている。
それが生きた証。
死ぬことは証を残すことであるのかな...と、考えた一冊だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?