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武田惇志 伊藤亜衣「ある行旅死亡人の物語」感想~現金3400万円を残し孤独死した女性と対話する一冊~

本とおしゃべりする。
私は、読んでとき本と対話してる。
といっても、ほぼ聞き役だけどね( ˙˙ ; )

ダメだよー!よかったね♡志村うしろ的になり叫んだり...合いの手を入れてる。

今回は、ある一人の女性の人生が書かれた本書ともおしゃべりしてみた。

読了後、現金3400万円を残し孤独死した身元不明の女性は、誰とおしゃべりしていたんだろうと、ぼんやり考えた一冊。

2020年4月。兵庫県尼崎市のとあるアパートで、女性が孤独死した。 
現金3400万円、星形マークのペンダント、数十枚の写真、珍しい姓を刻んだ印鑑鑑......。   
記者二人が、残されたわずかな手がかりをもとに、身元調査に乗り出す。

SNSで話題になっていたので本書のルポのことは聞きかじり、興味あったので詳しく知りたくて手に取る。


はじめて知る、
タイトルにもなっている『行旅死亡人<こうりょしぼうにん>』

病気や行き倒れ、自殺等で亡くなり、名前や住所まど身元が判明せず、引き取り人不明の死者を表す法律用語のようだ。


著者(記者)がネタに困って行旅死亡人をデータベースを検索すると、右手指全て欠損し現金3400万円を超える現金を所持して推定年齢77歳の女性に興味を持ち調べることに。

40年近く前に契約したアパートの名義は男性。
でも男性の姿を見た者はいない。

労災事故で右手指を失くすも、労災保険を断り、年金を受け取らなかったり、最近の自分の写真もない。携帯電話もない。留守番電話もない。古いプッシュ式の電話が一台あるだけ。生きているあいだ電話はかけた形跡なし。


小説や映像になりそうなミステリーな女性の暮らしぶり。
身元を隠そうと生きていたように思われるのだが...。
彼女は、どうしてひっそりを人目を忍んで生きてきたのか?

ミステリーのような彼女の人生に、私が期待するようなすっきりとした解決はない。

だからこそ、彼女と対話する。

彼女の部屋に置かれたベビーベットで眠る犬🐶のぬいぐるみの名は「たなかたん」くん。

人目を避け暮らす彼女は、たなかたんくんとどのような会話をしていたのだろう?
彼女を守り続けたたなかたんくんの写真がせつない。


そして社会に足跡を残さずに生きようとしてたはずの彼女にも、ちゃんと生きた足跡が残っている。

それを見届け、会話する。

ひとりで生きていかなきゃと思っていたけど、ひとりではない。
誰かが私のことを知っている。

それが生きた証。
死ぬことは証を残すことであるのかな...と、考えた一冊だった。


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