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夕木春央「方舟」感想~探偵役にも大どんでん返しー!

すべての命は平等なのか?
命の優先順位とは?

コロナ等で感染者が急増し治療を受けることなく亡くなった人もいたことは記憶に新しい。

また、食物連鎖や益中害虫などなど...すべての命は平等じゃないし、多数の傷病者が発生した場合、治療対象に対し優先順位つける。

すべての命は平等ではないを踏まえ...。

では、ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?(←トロッコ問題)

本書の重要なカギとなるのが「トロッコ問題」です。

2023年本屋大賞ノミネート作でもあり、人気作品なので待って待って、
やっと読めたー。

9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。

はい、扉がふさがれたーーー!
ここでクローズドサークルになり、どうやって脱出するか。
脱出するには、だれか一人が犠牲になって地下に残らなければならない。

誰が?
そんなときに殺人がーー!
その犯人が残るべきなんじゃない?
犯人を探せー!

はい、ここで「トロッコ問題」です。

殺人者だから犠牲になってもいいのか?

「愛する誰かを残して死ぬ人と、誰にも愛されないで死ぬ人と、どっちが不幸かは、他人が決めていいことじゃないよね」(本文より)


他人が決めようとしてるんですよ。
意外とこの状態(クローズドサークル)に追い詰められなくても、他人が決めようとしてませんか...。

★☆

語り部と、語り部の従兄が探偵役となって動く。
語り部のどっちつかずの優柔不断さは、「花束は毒」の木瀬くんといい勝負だったね。
どっちつかずさが最終的にいい塩梅として物語を面白くさせてるんだけどね。

この物語に登場する人たちって、他人任せな人が多くてびっくり。

緊急事態なのに、ヒステリーを起こし騒ぎ立てる人もいないし、ひとつの部屋に集まることもなく個々で行動。

三人家族のお父さんは、どうにかしようと行動してたけど、若者たちはイマドキなのか?

タイムリミットは一週間しかないのに、一人で部屋に引きこもっていたら私ならメンタルやられてヒステリー起こすわ。

最後は、人任せじゃない人によって大どんでん返しされちゃうのも皮肉よね。(←若干ネタバレ)

そんでもって探偵役にも大どんでん返しが待っているのにも驚いた。

ドヤ顔だった探偵役の最後の声が聞きたかったのは私だけではないだろう。


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