『よいひかり』三角みづ紀
タイトル、装丁、
帯に書かれている「フライパン」の
詩の一節にひかれて手に取りました。
生活の何気ないひとこまが、
三角さんの目を通して静かに詠われていきます。
食卓のトースト、窓にさす朝のひかり、
コーヒーやスープの湯気、
オムレツの黄色、雨の匂い、
恋人との会話・・・。
三角さんが感じた風の音まで、
聞こえてきそうな気がしました。
どこにも奇を衒ったところがなく、
体から心からそっとあふれてきた言葉が
真摯に紡がれていることが伝わってきます。
ひとつひとつの詩が、こころの深いところへ
染みわたっていきました。
立ち止まってよく見れば、
いたるところに「よいひかり」は
降りそそいでいることに気づかせてくれます。
そして、なんてことのない日常が、
とても愛おしく感じられます。
何度でも読み返したい大好きな一冊です。
『よいひかり』
三角みづ紀
ナナロク社
2016.8