お盆の業務仕分け
リーン、リーン。
朝の玄関口に鈴虫の鳴き声が聞こえる。いつもより少し涼しいお盆の朝だ。そう気が付けば夏も折り返しを過ぎて、少しずつ秋の訪れが感じられる。
お盆真っただ中。行きのJRの車内は人がまばらだ。アロハシャツに短パンの親子連れ。それを横目にいつも通り出勤中のサラリーマン。いつもの殺伐とした満員電車とは違う不思議な空間がそこにある。
一方、オフィスに入ってしまえば特にいつもと変わりがない光景が待っている。皆、いつもどおり出勤し、パソコンを立ち上げ、メールをチェックして、仕事が始まる。
10時。スタッフがわらわらと会議室に集まり始める。お盆時期は客先が休みなので、このタイミングにこそやることがある。あることの片づけだ。
スクリーンにエクセル表が映し出される。映っているのは今動いているプロジェクトの一覧、そして各人のパンパンに膨れ上がったリソース表だ。
「はじめますか。」
マネージャーの一声で、長い会議の幕が上がる。この時期にやること、それは業務の断捨離である。
「さて、これをどう手じまいしていくか。」
客先対応にあわただしくしているうちは気が付かないが、大小いろんなプロジェクトがいつの間にか増えている。ある一時の事情でやむを得ず始めたきりズルズルと続いていったもの、立ち上げ時と状況が全く変わってしまって続ける理由がなくなったもの、その中からやめるべきプロジェクトを決めていく。
かつて国会で事業仕分けが行われたことがあるが、まさにそのようなイメージだ。
「はい、次。」
ここぞとばかりにプロジェクトが審議にかけられる。気が付けばお昼の時間を過ぎていたが、まだ協議は白熱している。
午後になり、ようやく整理がついてきた。各人のリソースもある程度目途が見えてきた。そこで下っ端もようやくこの断捨離の意味に気づいたようだ。
「これで少し余裕がでてくれば、やりたいけどできなかった新しいプロジェクトに手がつけられそうだ。」
いつの間にか外は雲行きがあやしくなり、風も強くなってきた。
「これから台風が来るのか。今日のところは早めに切り上げて帰るか。」
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