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【エッセイ】一人暮らしを始めて
【注意書き】本文は、実体験を基にしておりますが、一部脚色が存在します。なお、精神的に疲弊されている方、持病がある方に関しましてはブラウザバックを推奨します。
2021年秋。我が家には父の怒号が飛び交っていた。
私は家出を決めた。
家族
私の家族は、私(長男)、下に5歳ずつ離れた妹と弟、母、そして父の5人家族だ。お金で不自由することは少ないが、家族関係はまずまず。そんな家庭だ。
私の父はアルコール依存症というほどでもないが、酒に負けると性格が普段よりも荒くなる。もうあまり覚えていないが、物覚えがつく頃には暴力も振るわれていた。
小学生頃にはそんな暴力を振るうこともなくなったが、誰かに当たっていないと居ても立っても居られない性格ゆえに、常に家族か職場か誰かがストレスのあて先になっていた。
この頃、私と母が話す中で母が言った言葉が今でも忘れられない。
ああ言ってるけど、誰も父親だと思ってないでしょう?
威張る父を陰に私に言った言葉だ。これが我が家だ。
家族写真が好きな父。私たちほかの4人は嫌な顔をしながら写真スタジオで撮ったときの話をするともう少し空気感が伝わるかもしれない。
全員揃ってのグループショット。全員のショットでも私たちの表情は硬いまま。カメラマンさんが「はい、皆さん仲良く笑ってください」と呼び掛けて頑張って皆笑う。
父は切り出す「仲いいのは今だけですから」。母「ねー」。その受け答えに笑う兄妹。撮り終わると写真ほどの笑顔はそこにはなかったと記憶している。
祖母と会う際、3回に1回には父と母の別れ話があるのかという話に至る。
私が生まれたのも気の迷いのようなものだと母に言われたこともあり、一時はそれで病んだときもあった。
もちろん、一般のご家庭の皆さんは「いやいやいや」と言いたくなることだろう。
私からしてみればこれが家族なのだ。
正直、伝わらないと思うが、本当に普通の家族のように仲がいい期間が時たま訪れるが、そんな時間はさほど長くはない。
「独立しろ」
私は2021年秋に父に「いい加減に独立しろ」と怒られた。そのまま家を出される勢いだった。荷物も持てずそのまま出されたら間違いなく、会社には理解されないし、そのまま仕事が出来なくなったことだろう。
当時22歳。会社員とはいえ、時給制。年収も100万を少し出るぐらいで全くもって安定した収入はなかった。
そのため、このままでは無理だと反抗をし、せめてお金が溜まるまで実家に住むことを訴えた。この賃金ではまず東京で住むことはかなり難しい。
訴え続けた結果、待ってもらえることになった。
自分が提示した時間は1年。1年以内に貯金し、家を出ていかなければならなくなった。
貯金
オタクは貯金というものが苦手だ。これは偏見ではあるが、私はオタクを名乗りながらも「趣味は貯金です」と断言できる人間は見たことない。
グッズが高い、チケットが高い、スパチャは文化と何かとお金のかかるVTuber業界。ライティングをやるうえで貯金はかなり難しかった。
昼食は100円のおにぎり2つという日が多かった。
職場からは「またか」「食事細いね」「こだわりないんだね」のように言われていたが、自分自身結構食べることが好きなので結構な我慢をしてきていた。
9か月をかけて貯金をして、約70万円。様々なものを切り捨てながら貯金をした。
家探し
私の仕事は決まった時間に来て、決まった時間に帰るような仕事ではない。
そのため、まともに内見など家探しを出来る時間はあまりなかった。
そこで私はやしろあずきの漫画の広告を見ていた不動産屋、オタクのヤドカリを頼った。
LINEのやり取りで家を決められる手軽さ、条件を指定した中で担当者が条件に合いそうな物件を探してきてくれるという効率の良さは時間のない私からしてみればとても理にかなっていた。
別にPR案件だから書くのではなく、本当に楽に決まったからからこう書いている。
予定を合わせて2択で選んだ家に内見し、条件がよかった家を選べた。
本来ならネットから下がるのもかなりの時間がかかる。その時間を短縮するうえにいい物件を選べたのだから本当に感謝している。
ただ、選んだ物件には1つ問題があった。
実家からほど近いところにあった点だ。
お前は何もやってもダメだ
最初は父に引っ越し先の資料を見せた時に「いいんじゃない」の一言をそっけなく言った。半年前は「出ていけ」と顔を真っ赤にして言っていた反面、興味がない様子だった。
しかし、その2日後には母に対して父は「あいつはなんなんだ」と怒鳴りつけ、「またいつものか」とその様子をよそに部屋で仕事を続ける様子に怒り新党となった父は私の部屋の引き戸を壊し、呼びつけるなり「家が近すぎるんだよ」と怒鳴った。
「お前の顔を見ているだけでイラつくんだよ」。
父は私を気に入っていない。私を可愛くて仕方ないんだよと言うことがあるが、正直に言えばこういった怒られる経験などから、心からそう思えたことは少ない。
自身もVTuberを見ているうえにゲーマーを自称する一方で、オタクである自分を否定する。
勉強をしても出来ない私を否定する。
運動が出来ない私を否定する。
私は父から様々なものを否定されて生きてきた。
父は私の生き方を縛ろうとする。
もっといい高校に行け、東京大学に行け、契約社員は許さない。
母曰く、40年以上前の価値観で生きる父は家族が自分の通りにならないと機嫌が悪くなる。
だから、今私は社会の一般的な人たちと生きる道が大分曲がっているのだと思う(人のせいにするなといえば至極まっとうな正論でしかないが。)。
私はもう23歳だ。
自分で自分のことは決められる。
だが、父は私のことをまだ父は縛ろうとするわけだ。
仕事柄、遠い場所に住むことは憚られる。緊急出勤の必要を要した際に対処することが難しくなる。
その上で現在の居住地は最適だった。
父は家が近いことで母や祖母から手助けをもらうのではないかと思い、引っ越しには真っ向から反対した。
私はその旨を伝えたが、その時父は聞き入れなかった。
引っ越し
数日経って父も珍しく「いい過ぎた」と伝えてきた。
こんなことは今までにあまりなかったことだった。
そうして無事引っ越しの準備をはじめ、私は少しずつ部屋のものを片付ける。4畳ほどもない狭い部屋だったが、それでも私の部屋にはぎっしりとモノが詰め込まれていた。
CDと同人誌は山のようにあるため、売るのもすてるのも扱いにはかなり難儀した。
引っ越すにあたっては沢山のものを手放した。
特に手放した中で印象的だったのは、父母から貰ったマルチコンポだ。
コンポは私にとっての音楽やカルチャーの原点。
そのコンポでラジオを聴いていたからこそ音楽が好きになった。
大好きなサカナクションにも出会った。
今の自分はそのコンポがなければないといっても過言ではない。ライターにもなっていないと思う。
引っ越しの準備が出来て、家で独り言をつぶやいていると、やけに部屋の響きがよかった。
ベッドだけがある空間に違和感を覚えた。
5年以上過ごした部屋だ。何もない寂しい光景は少し感傷的になった。
なお、私は引っ越しの上でも父の目をかいくぐる必要があった。
引っ越しは貯金も少ない関係上、祖父祖母の車を使わなければ厳しかった。
だが、父は人に頼るなと主張しているためにこの方法を父が見る中で使うことは出来なかった。
この点においても気づかれないように運び出していたので、苦労した。
新生活
新生活は家賃を払っているのにも関わらず、仕事の忙しさから一か月半を要してしまった。
入居前に壊れていると確認していたインターフォンは、入居出来ていない間に管理人さんと会えないままだったこともあり、入居の際でも壊れており、今でも玄関と通話が出来ない。
大変困っている。
それにインターネットもずっとスマホのテザリングを使っているので、スマホが熱暴走をするとPCの通信が切れてしまう問題が発生している。
そのうえ、スマホは熱暴走すると充電が出来なくなる不具合を抱えてしまい、仕事にも悪影響が出ている。
さらにはテザリングも万能ではなく、新居はあまり電波が受信できないため、窓辺にスマホを置いておかないとテザリングが機能しない問題も抱えている。インターネットが開通するまでは大変住みにくい。
だが、周辺環境はよく、何一つ不自由はない。
窓ガラスもしっかり防音されているのか、寝る際に外からの音が気になって眠れないということがなくなった。
買い物なども困っていないし、むしろどこに買いに行こうか迷うぐらいだ。
家具はテレビ、本棚、机、PCを除いてすべて新しく購入した。ベッド、テレビ台、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、水回りに至るまで生活に必要なものはすべてそろえた。
20万円ほどかかったが、それでもQOL(クオリティ・オブ・ライフ)またはCOL(クリエイティブ・オブ・ライフ)への投資を思えば、決して高いものではないと思う。
だが、そんな家具を使う時間は短く、多忙につき、ベッドを除いてはほとんど使えていないのが現状だ。
正直今日昨日でやっと部屋の片付けや身の回りが落ち着いたところだ。
今後は私の家に親しい人を招いたり、VRをしたり、色々活動を進めていきたいと思う。
一人暮らしをするまでに様々な苦労があったが、ようやくの一歩。
この部屋を手放すことがないようにしていきたい。
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