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出版社で書籍編集の仕事をしている会社員。 毎日のめんどうな家事を本や映画にこじつけ楽し…

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出版社で書籍編集の仕事をしている会社員。 毎日のめんどうな家事を本や映画にこじつけ楽しんでいます。趣味は古い料理書を漁ることです。

最近の記事

『全裸監督』のマックシェイク

夏の連休はNetflixで『全裸監督』シリーズをいっき見。 話題作で気になっていたものの、AV現場の舞台裏の物語なので、女性の私は気持ちが暗くなりそうで見ていませんでした。 たとえばポール・トーマス・アンダーソン『ブギーナイツ』も面白くて感動したけど、センチメンタルな思い入れがキラキラしすぎてる気もして、たぶん再び観ることはないと思う。 とはいえ『全裸監督』は、いざ見始めると作品の勢いに身を任せ全部見てしまいました。 『全裸監督』の原作原作となった本橋信宏『全裸監督』

    • 『ジェイン・オースティンの読書会』のブラウニー

       ジェイン・オースティンが好きです。彼女の長編処女作にして死後に出版された『ノーサンガー・アビー』には下記のような文章があり、笑ってしまいます。約200年前の女性が書いたとは思えない。今の女の子みたいです。 ふたりはポンプ・ルームを歩きながら楽しいおしゃべりをしたが、もちろん話題は、若い女性をあっという間に仲良しにしてしまう話題、すなわちドレス、舞踏会、恋のたわむれ、そして奇人変人の噂などだった。(中野康司訳『ノーサンガー・アビー』より) ゾーイ・カザンの母ジェイン・オー

      • 『日本橋』のハマグリの潮汁

        同じ職業のライバル同士が力の限り戦うことでお互いを認め合う友情映画はいっぱいあります。 同じ人を愛する恋敵同士が、その愛し方を通して尊敬し合う映画もいっぱいあります。 市川崑監督『日本橋』も私にはそんな映画に思えました。好きなシーンがあったので泉鏡花の原作も読み、ゆかりの場所めぐりもしました。 あらすじ主人公のお孝(淡島千影)は日本橋の売れっ子芸者で、西河岸の延命地蔵尊の近くの露地で置屋を始めます。その露地には芸者の幽霊が出ると噂されていましたが、気の強いお孝は千世(若尾文

        • 『ブラッド・ワーク』のクリスピー・クリームドーナツ

          2009年のある日。 新宿駅南側で思ったより用事が早く終わり、時計を見ると19時。 「今だ!」と思い立って足を運んだのが、クリスピー・クリームでした。 上陸直後のすごい行列ができていた頃のことです。15分ほど並んでいると、できたての温かいドーナツを1個もらえて得した気分になりました。 当時、私は日本上陸前からクリスピー・クリームを食べてみたいと切望していました。 待望の日本上陸なぜそんなにクリスピー・クリームの上陸を待っていたかというと、クリント・イーストウッドの映画『

        『全裸監督』のマックシェイク

          『現金に手を出すな』のラスク

          ジャン・ギャバン主演、ジャック・ベッケル監督作品です。ギャング映画なのですが、はじまりのシーンはいきなりレストラン。モカケーキとか出てきます。 そして、なんといってもラスクのシーンが印象的でした。 あらすじマックス(ジャン・ギャバン)とリトン(ルネ・ダリー)は、強盗で得た五千万フラン分の金塊を隠し持っているギャング。 ところが、リトンの女(ジャンヌ・モロー)のせいでその秘密がアンジェロ(リノ・ヴァンチュラ)に洩れてしまいます。 ラスクとミュスカデマックスとリトンが隠れ家

          『現金に手を出すな』のラスク

          『クイーン』とスミレのチョコレート

          いつかのバレンタインデーに、シャルボネル・エ・ウォーカーのチョコレートを買いました。 日本でもたまに売っているところを見かけますが、エドワード7世の援助を受けて1875年に創業したイギリスのチョコレート専門店です。今でも王室にチョコレートを納めているそうです。 スミレクリームのチョコレートエリザベス2世はこのシャルボネル・エ・ウォーカーのスミレクリームのチョコレートが好きらしいです。 イギリスのスミレクリームのチョコレートと言えば、アガサ・クリスティの『バートラム・ホテ

          『クイーン』とスミレのチョコレート

          『暖簾』の塩昆布

          『暖簾』は山崎豊子の小説を川島雄三が映画化した作品です。 山崎豊子は言うまでもなく『白い巨塔』『華麗なる一族』『花のれん』などを残した小説家です。 『暖簾』のモデルになった昆布屋さんが実在し、東京にも支店があると知り、映画を観た当時すぐに買いに行きました。 小倉屋山本がモデルモデルになったのは小倉屋山本の昆布です。 ホームページにも『暖簾』の話が書いてあります。 原作を読んでいると、職人気質の初代が極めたおぼろ昆布が食べてみたくなるのですが、映画を見ると二代目がヒット

          『暖簾』の塩昆布

          『大いなる遺産』のミートパイ

          新井潤美先生の本を読んだら、複雑で芸の細かい「格差ネタ」がイギリスの伝統としてあることがわかり、とても面白かったです。 本の中に出てきたチャールズ・ディケンズ原作、デヴィッド・リーン監督のイギリス映画『大いなる遺産』を見ました。 この映画でなんといっても印象的な食べ物は、少年ピップが脱獄囚のマグウィッチに脅されて、家の戸棚から持ち出すポークパイです。 戸棚のポークパイこれがゴロッとしていて高さがあって、なんとも美味しそうなんです。そのゴロッとしたポークパイにマグウィッチ

          『大いなる遺産』のミートパイ

          『落第はしたけれど』のシベリア

          東京の神保町にあった「アムールエーパン」というパン屋さんの前をよく通っていました。 そこで「シベリア」を売っていたのがずっと気になっていて、買ってみたことがありました。 『風立ちぬ』のシベリア今ではシベリアと言えば宮崎駿監督『風立ちぬ』に出てきたことで有名ですが、以前は、シベリアが出てくる映画と言えば、小津安二郎監督『落第はしたけれど』でした。 小夜子(田中絹代)が働くパン屋で、落第が決定してしまった高橋(斉藤達雄)が悲しさをごまかすようにシベリアを3個食べます。 シベ

          『落第はしたけれど』のシベリア

          『イヴの総て』のセロリ

          私はポール・ヴァーホーヴェン監督が好きです。『ショーガール』も好き。『イヴの総て』は『ショーガール』の元ネタと言われています。 この映画を観てもう一つ思い出すのは『ガラスの仮面』の乙部のりえのエピソードです。 『イヴの総て』はベティ・デイヴィス演じる人気女優と、その座を乗っ取る機会を狙う付き人の女性(アン・バクスター)が主人公です。 ベティ・デイヴィスの魅力はじめはベティ・ディヴィス演じるマーゴ・チャニングがイヤな女に思えるのですが、だんだんイヴ役のアン・バクスターの生真面

          『イヴの総て』のセロリ