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楽しく!安く!リノベーションのゼロからイチまで!

どい書店成長記:その3

どい書店という風変わりな本屋

愛媛県の山奥の町「小田」の商店街にある、古民家喫茶「どい書店」。英語表記を「do it 書店」と名付け、なんでもやる本屋として飲食店や、食品販売をしながら小田の町に佇んでいる。

風変わりな本屋ができてから地域外の人が「小田」という地名を知り、行ってみたり、中には住んでしまう人も出てきた。このお店はいったいなんなのか?店主の岡山が回顧録的にやってきたことを書いていく。「店主の人柄」「知ってもらう方法」に引き続き、今回は「楽しいところのつくりかた」について!

↓どい書店の成長期シリーズはこちらにあるよー!


空き家を楽しく、美しく!

空き家活用はいま、「リノベーション」「DIY」などの言葉で流行っています。僕が運営している「どい書店」は10年ほど空き家でした。そこからリノベっぽいことをして飲食店やコミュニティスペースにしています。

リノベーションは大変です。物件を選んで、仲間を集めて、お金を集めて、資材も集めて、どうにかこうにか場所を作っていく。めちゃめちゃ大変な作業です。なので僕はなるべくリノベをしないように意識してきました。

しかし結果的にシェアハウスやシェアオフィスなどリノベーションぽいことは3年間で4棟やりました。「関わった程度」を含めると+8棟くらいになります。その体験談から、いかにリノベの意識が低くてもリノベっぽいことをしていくかを書けたらと思います。

お金に余裕がある、もしくは終の住処としてのリノベーションをお考えの方にはあまり参考にならない話だと思います。

・関わる人がある程度いる、心地いい場所を作りたい
・輪を広げながらリノベーションしたい
・費用対効果の高い、リノベーションをしたい

な人向けの文章です。


そもそもリノベとは?

まず始めにリノベーションとはなんなのか、リノベーションの説明と工事までの道のりなどを意識低く書いていけたらと思います。

リノベーションはお金がかかる!

そもそもリノベーションはお金がかかるのです。僕が思い切って愛媛に乗り込んだ時、預金残高はおそらく5,000円なかったんじゃないかと思います。派遣バイトでギリギリお小遣いを稼ぎ、なんとかクレジットカードでごまかしながら引っ越ししました。

なにせお金がないけど、憩いの場所を作りたい。いかに安く、楽しく、みんなが居心地の良い場を作っていくか。意識低い系のリノベーションを目指しました。

当初の様子。

リノベよりも先に物件との出会い!

リノベーションという言葉は約10年前に使い始めた気がします。日本でいう「リノベ」で最も影響力の高いことは「物件選び」。いくらお金をかけて、最高のチームを作っても、結局のところ、リノベとは建物の一部を変えるだけなのです。元の建物の質によってリノベの質は大きく左右されると思います。

また、建物の状態によっては掃除だけで1年かかった水道工事だけで300万円かかった、なんてこともよくあります。掃除で1年、水道工事で300万円かけても、使いにくかったり、収益が出なかったり、なんらかの成果が出ないととても寂しくなるのです。となると、成果を上げやすいのは物件選びなのです。

まず、自分が好きな物件を見つけてください。そして、その物件に関して、近所の人に話を聞いてみてください。もしくは、近くの役場で話を聞いてみてください。そうすると、自ずと物件における最重要人物と繋がりが持てるはずです。そうです、その最重要人物とは「大家さん」です。

大家さんと自分。

リノベより先に大家さんとの出会い!

物件を探す上で最重要人物は大家さんです。そもそも大家さんのOKがないと家を買うことも借りることもできません。そして大家さんの管理次第で掃除の手間や水道工事にかかる費用なども全然変わってきます。

大家さんが空家に対して、どれだけの理解があるか、思い入れがあるかが重要です。リノベを大歓迎な人もいれば、あんまり触ってほしくない人もいます。

大家さんとつながるにはご近所さんから繋いでもらうのが良いと思います。見ず知らずの人に空き家を貸す人なんていませんから、知人づたいに借りることが大切です。特に知り合いがいない場合は地元の役場に行って繋いでもらうのがいいと思います。

僕の場合は知人づたいに物件を知り、役場の人に大家さんを繋いでもらいました。大家さんはとても気さくに出迎えてくれ、最低限住むところの、畳とふすまを替えてくれていました。水回りやキッチンも僕の前に入るかもしれない人がいた関係で、直してくれていました。

そして、初めての顔合わせの際に、私はここに住んだらやりたいこと的な企画書を持っていきました。もしお屋敷を借りることができたら、こういうことがしたい、というのをA4の紙5,6枚にまとめて持っていきました。企画書を用いながら説明をすると、広い家だったこともあり、住む以外の使い方をしてもいいよ、と入居の時に言ってくれました。

大家さんとのつながり方をまとめると

・近所さんや役場の人に繋いでもらう
・なんとなくしたいことをまとめた紙を持っていき伝える

ことをしました。最初のうちは変更点がある都度大家さんに確認をとったり、掃除箇所も報告していました。時には手伝ってもらったり、差し入れをくださったりしました。

売り物件の場合はどうすれば?

物件には「賃貸物件」「売り物件」の2つがあります。
売り物件となると高価な買い物になりますので、とても慎重にしなくてはいけません。そして、買っただけでいいかとなるとそうではなく、今後数十年先も物件の面倒を見ることになるのです。面倒が見れない場合は不動産業者に依頼します。すると管理費と掲載料がかかったり、その間にも固定資産税がかかります。また、日本の物件は古くなればなるほど、資産価値が下がるので、持っているだけで不動産価値が下がる、すなわち買った時よりもお金はかかるのに、売値が安くなっていきます。

なので、売り物件を買っても良いなと思う条件としては

・今後その物件に数十年暮らす覚悟がある
・不動産運用をする自信があり、不動産業として保有しておく
・めっちゃ一目惚れして、道楽や趣味として付き合う自信がある


の3つくらいかなと思います。リノベ初心者の人には売り物件はなかなかハードルが高いと思います。リノベを急ぐあまり、焦って買うのは要注意です。

リノベより先に情報収集!

物件を選んでいて、なかなか決まらない人も多いと思います。なかなか決まらずヤキモキするかもしれませんが、そんな時は自分が好きなリノベのお店に行き、事業のスキームやリノベにかかった費用、時間、おすすめの業者などを聞きましょう。インターネット上だとPinterestやInstagramから探すのもありです。

また好きな店のオーナーも必ず「お手本にしている店」があります。その店を教えてもらい、オーナーに会い、同じように話を聞いていくと、物件との出会い方や、リノベの立ち上げ時期や運営の苦労話まで聞くことができます。そうやって好きな店を数珠繋ぎに回っていくと、本当に自分がやりたいリノベーションの方向性が見えてくるはずです。

ちなみに僕はゲストハウス+本屋さんのリノベをしたかったので、どちらもメッカである京都、西日本では福知山、福山、神戸の長田、鞆の浦、篠山をまわりました。東日本では多いと噂を聞いた長野の善光寺エリア、松本周辺、上諏訪、下諏訪、東京の谷根千から清澄白河-河童橋あたり、鎌倉などあらゆるところを回りました。また、リノベが始まったり、運営が始まってからも気分転換や問題が発生するたびに岐阜や長野県妻籠、小布施に行ったり、徳島県神山町・上勝町、島根県津和野・温泉津・石見銀山、福岡県八女福島、豊後高田、豆田など先進地エリアに行っています。

豆田にある元歯医者を用いた地元の展示空間。
谷中と根津をつなぐ蛇道にあるコスメのお店。
石見銀山群言堂 本店の買い物カゴ。取手が布で巻かれている。

そして「〇〇の町でお店を開こうとしています」というと、みなさん懇切丁寧に教えてくれます。本当にありがたい限りです。おそらく運営者の皆さんもいろんなところをまわりながらお店づくりをしたのだと思います。

運営者視点でいろんなお店を回ると、看板メニューはこれかー!店主さんとの距離感、空間づくり、などより深くお店を知ることができるので面白いです!

建物が決まってから

いざ、建物を使って良いとなってからのきをつけるべきことをこちらに書いてみます!

リノベより先に、掃除!

さて、大家さんとお話しが済み、物件が決まりました。まず初めにやることは、何よりも先にゴミを出すこと!

空き家をリノベーションをするためには避けては通れない道です。平気で2トン5トン10トンとものが出てくることもザラです。

ひとまず、大体の空き家はモノで溢れかえっています。ものを減らすだけで良い空間になっていきます。僕の場合はなにせお金がなかったので、車もトラックもなく、いらないものはひとまず後ろの方に追いやった気がします。

リノベより先に「やってみる!」

大学時代、建築学科の先生に言われた言葉があります。「現場百遍(げんばひゃっぺん)」。建築を設計するときは100回現地に足を運びなさい、という意味です。建築物は春夏秋冬、雨の日晴れの日、朝、昼、夕、晩、さまざまな状況に立たされます。気候だけならまだしも、周りのお店や畑の状況、自治会のイベントやお祭りなど社会的な要因もあります。100回も行くの無理やろ!とか思われるかもしれないが、本当に強度のある場づくりをしたいのであれば、少なくとも100回行くくらいの情報量を集めるべきです。

「リノベする」というと、地元で人気の建設会社や内装設計の事務所に依頼することもあります。しかし、まず人気の会社が自分のリノベしたい建築物に100回も通ってくれる可能性は極めて低いです。となると、施主側が100回くらい通い、情報を集め、デザイン会社や大工さんに物件の情報を伝えるのが良いと思います。

物件の情報を集める中で自らリノベの前段階として「模様替え」をやってみるのがおすすめです!

リノベより先に模様替え!

自分でやってみると、情報はたくさん集まります。なんとなくの間取り図を描きます。素人が描くのであれば四角い箱が並んでるくらいで構いません。家に入ってから、どうやってキッチンにたどり着くか、お客さまの溜まり場はどこにするか。動線や、プライベートとパブリックの配置を決めてみて、なんとなく部屋を模様替えしてみましょう。

「どい書店」ではしょっちゅう模様替えをします。月に数回やっている時もありました。徐々に頻度は減っていきますが、今も替えたくて仕方がない部分があったりもします。

自分でいざ椅子や机、タンスを動かすと、図面を描くよりもずっとイメージが湧きやすくなります!そして、なんとなく配置して、何日間かその間取りで過ごしてみます。そうすると課題が見えてきます。

模様替えはとっても現実的で実験的なリノベーションなのです。そして施主側のリノベの経験値を上げるお手軽な方法でもあるのです。

リノベより先に協力者づくり!

模様替えをしているとだんだん気づくことがあります。
「あのタンス動かしたい」
「あの辺に棚を作りたい」
「あの柱、なんていう木の種類だろう」

荷物を運んでくれる人、棚を作ってくれる大工さん、知識を教えてくれる専門家など、ご近所さんや親戚、さまざまな業種の専門家との付き合いにあると思います。人によっては1回だけ関わる人もいれば、数年に渡って付き合う人も出てくると思います。

そういう協力者が増えれば増えるほどプロジェクトは進みやすく、より深みのあるものになります。

喫茶ランドリーを立ち上げたことで有名な田中元子さんが使っていた言葉で「あれおれ詐欺」というのがあります。「あの机はおれが持って行ったんやで!」「あのタンスを寄付したのは私やで」といったようにさまざまな人の思い出がその物件に入っていけば自分1人だけではない、その物件に愛着を持つ人が増えていきます。

協力者をイベント的に集まればイベント的な協力者としての関係性が始まりますし、ご近所付き合いでゆるく手伝ってもらったり、肩肘張らない関係もありです。

また一般的には親族が手伝ったくれることが多いです。親族はある意味で強いつながりですから協力者として引き入れていて損はありません。

手伝ってくれる中で、「この家にはハサミが足りないから余ってるのあげるよ!」とか、「扇風機が足りないのですが、持ってないですかね?」といった場所に足りないものや欲しいものを共有していけば、安くて関係者とのつながりが物的かつ時間的に作られていくことになります。

建物はアート作品やブランドバッグと違い、高価なものですが、私的財産以外にも公的財産でもあります。周りの風景として、30年50年、長ければ数百年経ち続けるわけです。風景の責任を持っておくことも大切かなと思います。

皮算用よりも「欲しいものリスト!」

「リノベって、どれくらいのお金が必要なのかなぁ」

「資金調達はある程度しておかなきゃ!」

「収益計算はから、かけられる予算は。。。」

などと、ついついお金のことが気になります。実際、お金は便利である程度出せば物は揃います。しかし、運営を始めると欲しくなるのはモノだけではなく人です。運営してくれる人、お客さまとしての人がいてくれることが大切です。なので、掃除やリノベの段階から関係者を増やすことは大切です。

その一つの手法として、欲しいモノリストがあります。

これからお店を作ったりリノベをする上で欲しいものを書き出して、お店の前に貼ったりSNSに投稿します。そうするといろんな人が見てくれて、その場所と人の繋がりが生まれます。

これはあくまで人と場をつなぐ一例ですが、いろんな側面や機会をつかっていくといいと思います!

建物を熟知してリノベーション!

何事もそうですが、観察するか知識を入れることは大切です。ただ闇雲にリノベがしたい!と思っていても、いい場所は生まれません。自分が目指すべき場所に近いところに行き観察し、運営者に話を聞きを繰り返していきましょう。そうすればきっと良い空間ができると思います。

そして全国的なリノベで落とし穴となっているのが建物の知識が少ないままリノベーションすること。

なぜ床の間があるの?土壁の効用は?和室の目線の特徴。畳の意味、天井の意味、古民家は暮らしの知恵の宝庫です。それらの知恵を無視して流行りや映えを目的としたリノベーションも少なくありません。

年配の大工さんやじいちゃんばあちゃんの日本家屋の知識に耳を傾けながら行うとより強度のあって居心地の良い優しい雰囲気の場所になると思います。

かっこよさやおしゃれだけがリノベーションではありません。

新築より先にリノベーション!

現在、空き家は全戸数の1/7とも言われており、新築を建てる意味をもう一度考える必要があります。

なぜ空き家を使わずに新築を建てるのか、それを問いただしてから計画すると良いでしょう。

新築は自由度や華々しさがあるかもしれません。反対に古民家やリノベーションでしか出せない味もあります。

また社会背景などを踏まえても新築は余程のことがない限り、環境問題、経済状況としてやめたほうが良いと思います。


まとめ

いかがでしたか?安く楽しくのポイントは協力者や関係者です。最初は恥ずかしかったり、悩むかもしれませんが、あらゆる人の力や知恵を借りながら、場づくりをしてみてください!

よろしければサポートお願いします。お金は地元小田のまちづくりの資金に使います!