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神はオンボーディングに宿る

PdMノウハウの第12回目のnoteです。第11回目のnoteは「継続率は未来を見通す」でした。もし良ければ読んでいただけたら嬉しいです。今日は「神はオンボーディングに宿る」というタイトルで、全てのプロダクトで重要であるが、見逃されがちなオンボーディングについて言語化することで、理解を深めていきたいと思います。参考にしていただき、自身のプロダクトが1mmでも成功に近づけば幸いです。僕が所属している組織について、このnoteで言及している概念については全く関係がないことを最初に明記させていただきます。

オンボーディングとは

まず、そもそもオンボーディングとは何かについて定義を確認したいと思います。このnoteでは、オンボーディングをスマホやwebアプリケーションで、初回利用時に行う導入を指していますが、多分入社時などで入社オンボーディングを受けたこともあると思います。オンボーディングの意味と成り立ちは以下のようです。

「オン・ボーディング(on-boarding)」とは、「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」から派生した言葉。

本来は船や飛行機に新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して、必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指します。人事用語としては、企業が新たに採用した人材を職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の受け入れプロセスを意味します。そのほかにも、企業が提供するサービスなどの新たなユーザーとなった顧客に対し、そのサービスで得られる体験の満足度を高め、継続的な利用を促すための一連のプロセスもオン・ボーディングと呼ばれます。

オン・ボーディングとは

なぜ、オンボーディングが重要なのか

オンボーディングの重要性について考えたいと思います。オンボーディングは一言で言えば「プロダクトの自己紹介」です。そのプロダクトがどんなものなのか、どのように有益なのかをユーザーに紹介するプロセスです。

オンボーディングの重要性について、継続率を用いて説明したいと思います。継続率については、前回のPdMノウハウ「継続率は未来を見通す」を参考にしてみてください。Adjustの数値によると、平均のDay1継続率は26%であり、これが示すことは74%のユーザーが1日目に離脱している (継続率の概念としては、完全に離脱しているわけではないですが) ということです。また、以下のような事実もあるようです。

実際に、平均的なアプリはインストール後の3日間で1日あたりのアクティブユーザー数の77%を失うというデータがあります。

Why Is Your User Retention Rate So Low?

つまり、100人のユーザーがスマホアプリをインストールしたとして、74人は次の日には開かないということを示しています。驚くべき数値でしょうか。せっかくインストールしたにも関わらず、ほとんどのユーザーはちょっと使っただけで離脱していることになります。実際に、自分のケースに当てはめると、自分も最近インストールしたアプリをほとんど使わずに離脱、あるいはアンインストールまでしたということがあるのではないでしょうか。

アプリを開発している者ならば、少しでも多くのユーザーに使って欲しいと考えると思います。しかしながら「継続率はカテゴリに依存する」でも書いた通り、継続率の最大値はカテゴリに依存します。実際の利用シーンを想像すると、理解しやすいかもしれないです。逆に言えば、カテゴリ依存している継続率の理論値までは、なんとか高めることができる可能性があるということです。継続率を高めるためにできる初手がオンボーディングであると個人的には考えています。その理由を説明します。

In the U.S., entertainment apps beat the rest when it comes to retention

上記は継続率のサンプルですが、ほとんどのサービスは同様のカーブを描くと思われます。注目すべきは、減少率が最初が最も高いということ、最初のリテンションを上回ることはないということです。具体的にはDay1継続率 (アプリをインストールしてから次の日に使う率) をピークに減少の一途をたどります。僕の経験から、このDay1 ~ Day7の継続率を改善することで、ベースとなる継続率が改善することがよくあると考えています。この初期の継続率を改善する鍵がオンボーディングにあると考えています。

良いオンボーディングとは

では、良いオンボーディングとはどんなものでしょうか。先ほどオンボーディングを「プロダクトの自己紹介」と表現しました。ユーザーはプロダクトを何かの課題解決のために利用しています。そのため、良いオンボーディングとは、そのプロダクトがユーザーの解決したい課題を、まさに解決してくれるソリューションであることが伝わり、最終的にはまた使ってみたいと思ってもらえること (結果として、継続率が改善する) だと定義します。もっと具体的には、アプリの使い方も簡潔に伝え、ユーザーが迷うことなく課題が解決することが望ましいです (そもそも説明が不要なUI/UXを提供することを目指した方がいいですが) 。

もちろん、最適なオンボーディングはアプリ毎に異なるため、このnoteでは具体的な手法については言及しません。代わりに参考となる記事を紹介させていただきます。

しかしながら、それでは投げやりになってしまうので、今回はメタファを使って本質について書いておこうと思います。再三となりますが、オンボーディングは「プロダクトの自己紹介」です。自己紹介すると思って考えると理解しやすいと考えています。例えば、僕について自己紹介すると以下のようになります。

僕の名前は奥原拓也といいます。
1993年生まれで、埼玉県出身です。
大学では、生物化学を専攻していましたが、知人とプロダクトを創ってみようということで始めたプログラミングが楽しくて、受託会社でアルバイトを大学時代にずっとしていました。自分でプロダクトをリリースして、数百人規模のイベントも開催したりして、インターネットの魅力にどっぷりハマってしましました。
その経験もあり、大学院に半年間通ったのちに、今の会社に紹介をいただき、事業創業期の一桁台でジョインしました。それが2016年の時です。
社会人になった時は、エンジニアとしてキャリアをスタートさせましたが、2018年からプロダクトマネージャーにジョブチェンジをして、既存プロダクトのプロダクトマネジメントに従事しました。
そして、2019年の夏ごろから、新規事業の立ち上げを行なっていて、今もその事業のプロダクトマネジメントに従事しています。
プロダクト開発をするのが大好きで、四六時中考えることが好きです。最近、子供が産まれて育児休業を取得しています。趣味は特にないですが、映画を見るのが好きです。実家では飼っていますが、こっちでも猫を飼うことが夢です。

ご存知の通り、これは長すぎますw
例えば、30分しかない中、こんな長い自己紹介をされてしまったら、途中から話を聞いていないか、早く終わらないかなと思ってしまいます。次に、このような自己紹介はどうでしょうか。

奥原拓也といいます。プロダクトマネージャーをしています。

今度は短すぎますw お互いにSNSで繋がっていて、ある程度知った仲でなければ、自分と話したくないのかなと思われてしまうかも知れません。両方、極端な例です。適度な量で、伝えたいことを伝えるのが大切です。スタートアップ界隈の人と話すならば、このくらいで終えて、あとは流れに身を任せてお互いに深ぼっていくのがいいでしょう。

奥原拓也といいます。
2016年に一桁台のスタートアップに大学院を退学してジョインして、最初はエンジニアをしていました。その後に、プロダクトマネージャーにジョブチェンジして、今は新規事業の立ち上げを3年ほど行なっています。

自己紹介する内容は人によって異なります。例えば、お互いにSNSで繋がっていて、交流があれば、自己紹介は本当に省略してもいいでしょう。自分がアプリを使い始めた時、めちゃくちゃ長いオンボーディングが出てきたら、ちょっと使ってみたいと思っていただけなら、離脱してしまうかも知れません。しかしながら、だからといってかなり端折って伝えても伝わらなくて、なんのアプリかわからず離脱してしまうということもあるため、適切な質と量を見極める必要があります。ここは正解をバンっと出すことは難しいので、指標をDay1 ~ Day7継続率として、何パターンも試してみるのがいいと思います。


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