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カフェインを摂るのは何時まで?薬学的に解説

カフェインを摂ると眠気が冷めますが、逆に寝る前に飲んでしまうと、なかなか眠れなくなったり、夜中に目が覚めてしまったりして、かえって次の日に寝不足になって困った経験はあるのではないでしょうか。

今回は、カフェインは夜何時までの摂取であれば睡眠の質を低下させないかを、「半減期」という概念を用いて解説したいと思います。

主に小腸から吸収された薬物は、血液中に取り込まれ全身に運ばれて作用します。血液中の薬の濃度を血中濃度を呼びます。

薬が吸収されている間は、次第に血中濃度が高まって行きますが、吸収が終わると肝臓や腎臓で処理されて尿や便として体の外へと排泄され、血中濃度は下がります。

カフェインも一般的な薬と同じように血中濃度が時間の経過とともに変化します。カフェインの血中濃度は摂取してから30分程度ピークに達し、その後緩やかに減少します。

眠気を冷ましたり、集中力を高めたい時は、30分前にコーヒーを飲みましょう。という話が広く知られていますが、これは血中濃度で説明できます。

前置きはここまでにして、半減期について説明しましょう。半減期とは、一旦上昇し切った血中濃度が、排泄によって低下して半分の濃度になるまでにかかる時間のことです。カフェインの半減期は4時間程度です。この数字をよく覚えておいてください。

健康成人男性16例に無水カフェイン50mgを空腹時単回投与した時のデータ(下図▽のグラフ)30分で血中濃度がピークになること、4時間程度で濃度が半分になることがわかる。

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(SG配合顆粒 添付文書より図を引用)

それでは、半減期を用いて睡眠の質を低下させない時間を割り出してみます。以前の記事でも紹介しましたが、カフェインは血中濃度が低い時には効果がありません。ある一定の値を越えることで眠気を冷ましたり、集中力を高めたりする効果が現れます。

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つまり、コーヒーを飲んでから就寝するまでに血中濃度がある一定の値まで下がれば睡眠の質を低下させることは無くなります。ここで問題があります。実は、カフェインの効果を示すか示さないかの境目の値は個人によって異なります。

じゃあ結局のところ結論が出ないじゃないか。と突っ込まれると言い返すことができないのですが、少し視点を変えて話を続けます。

カフェインを体に作用させにくいコーヒーがあります。みなさんご存知のデカフェのコーヒーです。日本ではカフェイン除去率90%以上の飲料をデカフェと表示することができます。(全日本コーヒー公正取引協議会、レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約)

一般的な薬の血中濃度は、摂取した薬の量によって決まります。2倍の量を摂れば血中濃度のピークは通常2倍になります。これをカフェインに当てはめると、デカフェでは血中濃度のピークが普通のコーヒーの10分の1以下になります。

つまり、普通のコーヒーの血中濃度が10分の1になるまで時間が経てば、同じ量のデカフェを飲んだ時と同じ程度の作用しか示さなくなると考えられます。

カフェインの場合、半減期が4時間なので、ピークの時の血中濃度を100%とすると、4時間で50%になります。ここで注意したいのが、半減期は血中濃度が半分になる時間です。8時間後は0%になるのではなく、25%になります。12時間後には12.5%、16時間後には6.25%、20時間後には3.125%、24時間後に体からほとんど消失します。つまり、同じ量のデカフェを飲んだ時のレベルまで血中濃度を下げようとすると、13〜14時間がかかるということです。

結論として、確実に睡眠への影響を防ぐためには、就寝13〜14時間前までに最後の一杯を済ませておくのが良いでしょう。

しかしながら、さすがに午後の一杯は飲みたいものですよね。8時間程度でピーク時の25%まで下がるので、人によってはこれくらいの時間でも睡眠に影響を与えないかもしれません。最後は自分の体との相談ですね。考え方を知ってもらえれば応用が効くのではないでしょうか。

では、またの機会に!


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