変人から賢人へ:ひとり言に秘められしポテンシャル
「話す」目的は、通常他人とコミュニケーションをとることにあるはず。では「ひとり言」はどうとらえるべきでしょう?
一人でぶつぶつ言っている人を見ると、「変人」のレッテルを貼られることも多いですけど、最近の研究によれば、この「内なる会話」は私たちの心と体を健康に保つ特別な役割を担っているのだ!ってことがわかってたりします。ひとり言が思考を整理し、行動を計画し、記憶を定着させ、感情を調整する手助けをしてくれていて、結果的に「自分自身をコントロール」しやすくなるってわけですね
歴史的にみれば、スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、幼児の言語が発達し始めるとすぐに自分の行動を言葉を発することによってコントロールし始めると観察しています。熱いものに近づくと、幼児は「熱い、熱い」と大声で言いながらその場から離れるみたいな感じっすね。しかもこのような行動は大人になっても続くのだ、と。同様に、ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーも1930年代に、ひとり言が子どもの認知的成長と感情調節に極めて重要であるって提唱していますね。その後も、数十年にわたる心理学的研究によって、ひとり言は「異常ではない」ということだけでなく、私たちの認知発達や全体的な幸福にとってポジティブな役割を果たしていることが明らかになっているんですな。
例えば最近の脳画像研究によれば、ひとり言をいうことで人間の脳はサルとは異なる脳の働き方をするようになることも確認されていたりとか。通常はヒトはサルと同じようにそれぞれのタスクに対して脳の視覚領域と聴覚領域を別々に活性化させるのに対して、一人ごとを言うことによって両領域の活動が統合され、結果的に思考や行動をコントロールできるようになったんだとか。サルはできないこのスキルによって、ヒトは複雑な思考ができるようになったってわけで、「ひとり言」が人間を人間たらしめる要因の一つなんじゃないか、とか思えてきますな。
もちろん「自分自身に話しかける」ことだけが自身の行動をコントロールする唯一の方法ではないでしょうが、ひとり言はかなり簡単にできるわりにかなり効果のある方法であるといえるでしょう。「話す」ってのは時に無意識に行う一方で意識的にも始めたり止めたり操作できる対象ですからねー。この点は呼吸法と似ているところもありますが、慣れるまではひとり言の方が効果が高いっぽいっすね。
結局のところ、私が「ひとり言」を推してる究極の理由は、ひとり言によって行動や思考のコントロールが行いやすくなる点にあります。つまり、ひとり言が必要な思考を活性化させる能力と無関係な思考(メンタルノイズ)を抑制する能力の両方を伸ばしてくれるんで、「ランダムな思考」が最小化され、必要な対象に高い集中力を向け、不要な対象への注意を最小まで抑えることが可能になることで、結果的に目標達成率が上がり、心身に問題を抱えづらくなるんですよね(実際、不安症やうつの人はランダムな思考が多い)。
アインシュタインやニュートンなどの天才科学者や、一流のスポーツ選手が、よくひとり言を言っていたというのは有名な話。彼らがひとり言で能力を最大限に引き出していたとしたら、私たちにもその可能性があるんじゃないのかなーとか思うわけです。
てなわけで以下ではまず科学で明らかになったひとり言のメリットを見てみましょう。そんで「ひとり言やってみるかー」ってモチベーションを引き上げたうえで、「でも、具体的にはどうやってひとり言を活用すればいいの?」ってコツを探っていくことにします。
ひとり言のメリット①:感情コントロール能力が上がる
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