見出し画像

リモートワークの最新研究【2021年10月版】「生産性、イノベーション、性格」

画像1

「リモートワークとどうやって付き合っていくか?」っていうのは、多くの企業・業界でなかなか難しい問題のようです。

ブログの方では過去に、「リモートにすると、睡眠が改善するかもよ!」とか、「在宅期間中でも意識的に日光に当たっておくとメンタルや健康によさそうだよ!」って感じで、リモートワークと個人の心身の健康の関係に関わる話題は何度か取り上げました。

で、オフィスワークもやりやすくなった昨今では、どちらかというと「ビジネス・生産性」との関連でリモートワークってどうなんだろう?って議論のほうが活発だったりする模様。

でも、議論の様子を除いてみると、「リモートワークのほうが自分のペースで仕事できるんだからはかどるに決まってるだろう!」「オフィスのほうが監視も働くから緊張感を持って働けていい!」みたいに、どうも二者択一の構造になりがちらしいんですよ。

そこで今回は、ビジネス・生産性との関連に絞ってリモートワークの最新研究を確認してみたいと思います。個人的には在宅ワークのほうが好きですが、今後はリモートワークとオフィスワークは併用されていくでしょう(R) し、同時に「結局どっちがベターなのか?」みたいな議論も尽きないと思いますんで、参考になる内容もあるんじゃないかと。

ちなみに、IT関係の仕事では、リモートの形態で仕事をする人が20%くらいで落ち着くんじゃない?っていう予測があったりするらしい(R)。


リモートワークは本当に生産性を上げてくれるのか?問題

リモートワークのメリットとして一般に主張されるのが、「通勤の時間・費用が減るし、プライベートとのバランスも取れる。よって、仕事の生産性が上がる!」ってところ。一方リモートワーク反対派は、「孤独な作業になるし、チームメイトとの信頼が損なわれてしまう。よって仕事の生産性は下がる!」って感じのことを断固として主張します。

そんな感じで、両者の主張は完全に敵対しているわけですが、科学的にはどうなんでしょうか?

実は、科学的にも決着はついておりませんで、リモートワークで生産性は上がる!ってデータもあれば、むしろ下がる!っていうデータもあって、どうとも言えないんですよ。なんで、上の2つの主張のどっちも正しいかもしれないし、間違ってるかもしれないしってわけで、相手の主張にも耳を傾けてほしいわけっすね。


まずは、リモートワーク肯定派のデータを見てみると、

■ 大企業の経営者からの300件以上の回答を分析したOmdia社のレポートでは、68%の企業が、リモートワークに移行してから従業員の生産性が向上したと考えている。そして、回答者の58%が今後もリモート主体、またはハイブリッドのワークスタイルを併用すると答えた

■ これは、スタンフォード大学の研究結果(R)とも一致していて、16,000人の労働者グループを対象にした調査では、自宅で仕事をした人は9か月間の生産性が13%向上し、離職率は50%も減少した

といったところ。経済学者の中でも、リモートにすれば通勤時間が減り、勤務時間中の無駄話とかが減る結果、生産性はずっと向上し続けると主張している人もいたりします。


一方、「必ずしもリモートワークがベストではない!」ってデータもそれなりにあって、一部を取り上げるだけでも、

■ Upworkの調査では、22.5%の管理職の人が、在宅勤務を始めてから自社の生産性が低下したと回答した

■ エセックス大学のメタ分析(R)では、大手ITサービス企業において、従業員が在宅勤務を開始したのち、生産性は20%減少したと結論付けている

■ オンラインスクールに関する研究(R)では、自宅で勉強する生徒は、ほとんど、またはまったく進歩しないと結論。(勉強と仕事は違う!って意見もありましょうが、共通する点も多いでしょう)

ってな報告がありまして、「生産性は絶対上がる!」「いや下がる!」って議論がいかに反対意見の根拠を見逃しているかがわかるでしょう。


でも、多く推計を見る限り、

■ 完全にリモートにしてしまうと、生産性は低下の一途をたどる
■ これは、中長期的にみたとき、対面の人間関係で得られる情報やイノベーションが、家での実質労働時間が長くなることによる利益を上回る可能性が高いことが原因

といった傾向が確認されておりまして、もちろん推測であることに違いはないわけですが、短期的には生産性が上がったように見えても、長い目で見れば、むしろ逆効果になる可能性も高いみたい。


実際、パンデミック前に行われた中国や米国のケーススタディ(R, R)では、自宅で働くグループとオフィスで働いたグループを比較した結果、以下のようなことが確認されております。

■ どちらのケーススタディでも、在宅勤務者のほうが生産性が高かった(処理件数が多かった)

■ もっとも、長期的にみると、リモートワーカーが昇進する確率は、オフィスワーカーに比べて約半分だった

って感じで、数か月単位で見れば、リモートワークはポジティブな結果につながったとしても、それが数年単位で見るとどうなんだろう?ってわけっすね。目の前の仕事を処理するスピードは上がるかもだけど、先を見据えたアイデアの創造やリーダーシップの向上といった点でいまいちかもしれない、と。

もちろん、だからと言って週5日オフィスに戻るべき!って言いたいわけではなくて、どちらかに固執するのはどうなんだろう?って一度考えてもらいたいというのが私の願いであります。メンタル面やプライベートの活動に関しては、長期的にもメリットが確認されているのは事実ですしね。


リモートワークはチームワークにどう影響するか?

次は、リモートワークでビジネスマンの人間関係にどんな影響が出るのか?ってのを見てみましょう。

Microsoft社の社員61,182人を対象にした研究(R)では、2019年12月から翌年6月まで、社員のメールやカレンダー、電話の履歴等をチェックして、パンデミックが仕事に及ぼした影響を調べております。

ここから先は

3,361字

¥ 250

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?