女性アーティスト物語 ヴァンダービルト (2)
2歳になる前に父親は亡くなり、当時、まだ二十歳そこそこの美貌の母は、莫大な遺産の相続者となった娘の信託金を手に、自分の双子の姉と共に世界中を飛び回って華やかなパーティーに興じるようになった。姉はシンプソン夫人の前のエドワード8世の恋人だったテルマ・ファーネスだ。
パリにも頻繁に往復し、エッフェル塔のそばの豪奢なアパルトマンに滞在した幼いグロリアの生活は、「高級遊牧民」のようで、いつもスーツケースを詰めたり開けたりの毎日だった。
やがて父の実家と母との間に溝が生じ、父の姉であるガートルード・ヴァンダービルト・ホイットニーがグロリアの母を相手に養育権を争う訴訟を起こした。有名な一族の身内間の争いは当時大きなスキャンダルとして扱われた。まだ幼いグロリアも証人として出廷した。訴訟は伯母の勝利に終わり、グロリアは母から引き離されてすぐに寄宿学校に送られた。伯母は母親に取り返されるのを恐れ、彼女に監視を付ける日々だったという。
しかし、有名なアート・コレクターでホイットニー美術館の創立者でもあるこの伯母が、彼女にアートやモード、実業の世界を見せてくれることになる。
(続く)
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