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銭湯と日常

社会人になってから、週2,3ペースで銭湯(正しくはサウナ)に通っている。

休日はスーパー銭湯でゆっくり漫画を読みながら過ごすことが多いが、
仕事の日はそんな時間もないので、家の近くの銭湯で済ませることが多い。

「おっ、わかさん!! 久しぶりだね〜〜1週間ぶり?」」

常連さんだ。
いつも同じ時間帯に行くので、顔馴染みが増えてくる。

ちなみに和歌山出身なので、ワカさん。
全く馴染みのない呼ばれ方だが、何気に気に入っている。
なお、島根出身の方はシマネ君と呼ばれている。


「この前〇〇のサウナに行ってたよね?どうだった?」

休日に行った有名なサウナについての感想を求められる。
サウナレビューサイトのアカウントを知られているので、
どこのサウナに行ったのか全て筒抜けになっている。

そして休日に行ったサウナの講評が始まる。


年齢もバラバラで(全員年上ではあるが)、なんの仕事をしているのかもほとんど知らない。
銭湯・サウナ好きという文脈だけで、自然とコミュニティが発生する。

甲子園の話をしたり、家族の話をしたり、旅の話をしたり、時には名古屋の風俗事情について聞かされたり。話題は多岐にわたる。

サウナが好きで銭湯に通ってるつもりが、会話を楽しむために銭湯に通ってるのではないかとすら思えてくる。

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交流を楽しみ、夜風にあたりながら20分ほど歩いて帰るのが日課。
帰りに聴く曲は決まって、斉藤和義の『空に星が綺麗』
歌い出しの

「口笛吹いて歩こう」

という歌詞のせいで、口笛を吹きたくなる。
ただ、気恥ずかしいので絶対にやらない。



そんな楽しかった日々も終わりを告げ、住む場所が変わることに。
銭湯も遠くなってしまった。
辺鄙で、わざわざ通えるような場所でもないので
長らく疎遠になってしまっていた。


そんな中、金沢出張へ。

毎月3日ほど金沢に出張に行くので、
必ず一回は銭湯に行くようにしている。

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今月の新しい銭湯。浴室は広く、多くの人が利用している。

地元の人たちの憩いの場になっており、各地で笑い声が聞こえてくる。
いい雰囲気だなと思いつつ、サウナ室へ。

おじいちゃんが青年に何やら怒っている。


「若いもんは本当に馬鹿だ。本を読まんとあかん。」


嫌な雰囲気だなぁと思いつつ、じっと耳を澄ませる。


「何も考えずに行動するから悪い。まずは雑誌の予測本とかを読まんといかん。自分本位に馬を選ぶな。」


いや、競馬やん。
と心の中でツッコミを入れる。

内容が内容だったので思わず笑いそうになる。

ブツブツ言いながらおじいちゃんがサウナ室から出て行き、残ったのは外国人と青年。
その後、青年と外国人で会話を始め出した。話を聞いてる感じ、スペイン人のようでサッカーの話で盛り上がる。
後から入ってきた青年の友人も合流して会話に花を咲かせる。

会話に入りたいなと思いつつ、タイミングを失ってしまい、
耳をそば立てながら無言で集中してるふりをする。
青年が出て行ったタイミングで、青年の友人にふと話しかけた。
皆常連らしく、よく同じ時間帯に出くわすので仲良くなったんだそう。

一人と関係性ができるとそのあとは簡単。
さっきの青年と外国人が水風呂に入っていたので、会話に参加。
皆で和気藹々と談笑をする。スペインの方は、大学時代に住んでいた京都のアパートのすぐ近くに住んでいたらしく、京都トークに花が咲いた。

恥ずかしさもあるけど、話しかけてみたりする一歩目踏み込めば案外あっさりだよなと思う。

銭湯から上がり、脱衣所に向かうと
先ほどのサウナー達も帰り支度をしていた。

おじいちゃんは相変わらずと言ったように、デリヘルについての持論を若者に語りかけている。彼らは部分部分は適当に流しつつも、会話自体は楽しんでいるようだった。

脱衣所を出るときは皆決まって「お疲れ様でした」と挨拶をして出ていく。
常連でもないが、自分もそれっぽく頭を下げる。

公共空間、例えばプールの脱衣所を出るときに挨拶なんて滅多にしないが、街の銭湯では日常茶飯事。
同じお風呂に浸かっているだけで皆同族だ。

新参者ながら「お疲れ様でした」と一言声をかけ、外に出る。

またホームサウナで話したいなと思いながら、
コンビニでビールを買い、夜風と共に帰路へ。

なんだか気持ち良くなって、いつもの音楽を流す。

「口笛吹いて歩こう」

少し照れくさくながら、今日は口笛を吹いてみた。

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