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久しぶりにフルートリサイタルに行ってきたよ。これは演奏会評ではない。

先日、木ノ脇道元さんのフルートリサイタルに赴いた
木ノ脇さんの演奏を生で聴くのは15年振りくらいだろうか

このブログは演奏会評を目的としたわけではないし、そんなことができるほどに僕は言葉を持たない
結論から言うと演奏会は素晴らしいものであった

以下は僕の個人的な感想となる
ので、特定の曲にしか触れない


プログラムのお目当は、我が師・川島素晴先生の「MANIC PSYCHOSIS I」と福井とも子さんの「color song Ⅰ」

チラシのプログラムには1曲目がドビュッシーの曲になっていたのだが、まさかの「MANIC PSYCHOSIS I」が1曲目

これから始まったことにより、僕は川島先生の音楽理論である「演じる音楽」を念頭に演奏行為を軸としてライブを聴く(視る)ことになる

「MANIC PSYCHOSIS I」は後半、息継ぎを大きくおおげさにするところがあるのだが、これは演奏行為の「異化」と捉えて行為性の拡大でありながら大きな呼吸音が音楽にも直結している箇所である

20代だった僕は、毎回ここで同じように息を飲む感覚に襲われた
これは演奏行為の追体験になるのだが、これについては川島先生の「演じる音楽」という論文の中でも言及されている

しかし、残念ながら今回はそれを感じることはできなかった
僕の感覚が鈍くなっているとも取れるが、演奏自体違和感があったのでそれだけではない気がする

1曲目にこの曲を持ってきたことは結構勝負だったのではないか?
と思っている
この作品は木ノ脇さんによって過去に何度も演奏されてきた作品なので、それが裏目に出てしまったのではないか?との邪推もしなくなはい

とは言え、演奏は抜群に素晴らしかった
この1曲目の時点で、「今日は本当に来てよかった」と思えるものだった

「color song Ⅰ」については、僕にとってはフルート曲の最高峰と感じられる曲で、フルートのソロ曲でこれほどまでに感動的な作品はないと思っている
(あくまで個人的感想)

時間軸上における音楽の流れやフレーズ、特殊奏法にいたるまでの必然性が完璧。
これ聴いたら、もうフルートソロは僕は書かないからね。という気持ちにさせられるのである
ま、それとは関係なく書くことはなさそうだけど、、

最後から2曲目には木ノ脇さん自身が作られたという作品
すごく根源的でシンプルなコンセプトに繊細な音色と技巧を乗せた味わい深い作品
色々とコンセプトやテーマがあったが、これほどたくさんのフルート作品を演奏れてこられて演奏はもとより超絶技巧にいたるまで自在にフルート操られる方がフルート作品を作られるとこうなるのかと感じさせられる作品であった

最後にブライアン・ファーニホウのユニティ・カプセルという作品
こちらはもう盛りだくさんで何もいうことなくお腹いっぱいというかんじなのだけれど、ただ一つ、「MANIC PSYCHOSIS I」よりも演奏行為への追体験を感じる箇所が多くあったという点

作品によるものか、演奏によるものか、最後だからか、はたまたそれらすべてかそれはわからない
しかし、素直にそう思った

プログラムは全部で8曲だったと思う
他については特に書くこともない


久しぶりにフルートソロを連続で聴いて思ったことは、「MANIC PSYCHOSIS I」という作品の革新性である

フルートという楽器の奏法が解体され、演奏行為と演奏者の身体性とともに再構築されている作品であるが、同じ時間軸の中で音、指、気づかい、演奏行為が全く別の時間軸を持って進んでいるのである

少なくとも今回のプログラムにおけ他の7曲は同じ音楽軸の中で進んでいる
しかし、「MANIC PSYCHOSIS I」だけは先に述べたそれぞれがそれぞれの時間軸を持って進みいわば合奏を行っている

他にもそういった作品があるかは知らない

こういう作品なのだと皆が理解しているのかもしれないが、僕は今回初めて自分の体験として身を以て感じることができたことが何よりの収穫だった
(今まで何度も聴いてきたのに、今頃かよ)

ちょっと長くなったので今日はこのあたりで

本当に素晴らしい演奏会だったなぁ


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