見出し画像

ベートーベンとコーヒー 豆60粒の真実 その2

前回は、ベートーベンがコーヒーを沸かすのに使用した器具はパーコレーターだろうということを書いた

さて、そのパーコレーターでコーヒー沸かしてみた
名付けて「ベートーベンコーヒー」(そのままやないかい!)

その前に検証しておかなければならないことがある
そう、豆60粒説である

これは、ベートーベンの晩年の付き人、アントン・シンドラーの証言によるもので、ベートーベンの死後に発表されたシンドラーの著書はベートーベンという音楽家の素顔を世界に知らしめた
しかし、ここ30年ほどの研究で内容の信憑性が低いことが認められている

「朝食には普通コーヒーを飲んだが、このコーヒーの用意を自分出ることがよくあった。というのは、この飲料については東洋的な気難しい趣味を持っていたから、彼は1杯に60粒を入れることにし、1粒でも2粒でも数えか違いをしないようにと勘定のし直しをするのを規則にしていた。客のある場合は特にそうだった。ベートーベンはこの仕事を最も重大な仕事のように念入りにした」(シンドラー 柿沼太郎(訳)ベートーヴェンの生涯 角川文庫)

これが60粒説に触れられている箇所であるが、60粒と明確に記されているのはこれだけである
ベートーベンというカリスマのエピソードとしては非常に魅力的であるし、実際これが一人歩きしている

しかしながら、、
実はあまり知られていないが、コーヒー豆の数についてはもひとつ重大な記録がある

1818年にベートーベンの肖像画を書いたフェルディナント・シーモンは、肖像画を描くためにベートーベンを訪れた際、

「16粒のコーヒー豆で入れた1杯のコーヒー」をベートーベンから出してもらった

と証言しているのである
これにはもう、正直僕は衝撃が走りましたよ

しかし、この話の信憑性も低い
なぜならば、この証言を聞いたと言っているのはシンドラーなのである

ん?どういうこうと?
となったと思うので整理したい

フェルディナント・シーモンが肖像画を描くためにベートーベンを訪れた際に「16粒のコーヒー前で入れた1杯のコーヒー」をだしてもらった
と「シンドラーに伝えた」とシンドラーが証言しているのだ

ややこしい。

これは、
「ベートーヴェン訪問」(M・ヒュルリマン(編) 酒田健一(訳))
というベートーベンに会ったことのある人がベートーベンについて語ったものをまとめた回想録に書かれているのだが、シーモンがいつこの話をシンドラーにしたのかは不明で、これ以上追うことが今のところ厳しかった

そこで、僕はある仮説をたてた
シーモンの証言が正しかったとして、これはベートーベンの生前1818年の話である
シンドラーの著書はベートーベンの死後1840年に発表されたもの

すなわちシーモンの証言からシンドラーの発表まで20年以上の時が経っているということになる
20年の間にシンドラーの記憶が16粒から60粒に変わってしまったのではないか?

実際に16粒と60粒を数えてみることにした

思いのほか長くなったので
次に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?