ベートーベンとフリーメイソン
ベートーベンがフリーメイソンだった説
正直、僕はどうでもよいのだが、ベートーベンだけではなくクラシック音楽を知る上ではフリーメイソンを避けて通れないので自分なりの考えをまとめてみたい
ハイドンやモーツァルトがフリーメイソンであったことは有名だし、当時の多くの音楽家はフリーメイソンであった
まずはっきりさせておきたいのは、フリーメイソンについて
フリーメイソンは元々、城などを作る石工(石の大工)の組合で、これが時代とともに貴族や芸術家を会員として入会させて組織を拡大していった
音楽家は優遇されたらしい
ちなみに、フリーメイソンは「フリー(自由)」な「メイソン(石工)」から命名されている
現在知られているような秘密結社としてのイメージは20世紀以降にできあがったもので、近代フリーメイソンと呼ばれており、ベートーベンの生きていた時代のものとは区別されている
元々石工の組合として誕生したものの、19世紀には貴族の金持ち仲良しクラブとしての色合いが強い
ここがポイントになる
国を超えてヨーロッパの貴族や金持ちたちが横のつながりを強くするためには必要なものだったと考えられる
すなわち、モーツァルトが幼少期から演奏旅行に出ることができた理由やハイドンのイギリスでの成功など、フリーメイソンという組織が後ろ盾にあり、そのつながりの中で音楽活動を円滑に行うことができたと言える
さて、ベートーベンである
彼はフリーメイソンだったのか
ベートーベンがフリーメイソンだったと言われる根拠についていくつか挙げてみよう
「第九」で有名な交響曲第九番の「歓喜に寄す」はメイソン賛歌として有名で、フリーメイソンのロッジの集会のために書かれたもので、ベートーベンは「歓喜に寄す」に曲をつける計画を第九を作曲する30年も前からしていた
作曲作品の中に♭が3つの調性(変ホ長調やハ短調)の曲が多いこと(フリーメイソンにとって、3は重要な数字)や友人ウェーゲラーに宛てた書簡に「フリーメイソン」という文字が出てくる点(ちなみに、ウェーゲラーはフリーメイソンだった)
「ピアノと合唱と管弦楽のための幻想曲 作品80」については、フリーメイソンのメンバーが聴けば「これはフリーメイソンの入団式を描写してる!」と思わせるものらしい
友人のホルツは「彼はフリーメイソンだった」と名言しいているし、晩年の付き人シンドラーは初めてベートーベンに会った際、彼の握手のしかたがフリーメイソン独自のものだったと証言している
(フリーメイソンの握手は初対面でもすぐに同士だとわかるように独自の握手がある)
これだけ並べれば「なんだ、ベートーベンはフリーメイソンだって証拠たくさんあるじゃん」と思ってしまうが
果たしてそうだったのか?
という疑問が残る
ベートーベンはミーハーな男で、流行り廃りにすぐ乗る傾向があった
何より、自分が音楽に専念できる環境を作るためにあらゆる努力をおしまなかった男である
貴族に作品を献呈したり(当時は献呈すると見返りがあった)
お金のために貴族の子どもに音楽を教えたり(ベートーベンは音楽を教えるのが嫌いであった)
いわゆる根回しにも余念がなかったことは事実である
つまり、フリーメイソンと関わりを持っていることで、自分に有利だと思ったに違いない
モーツァルトにも共通することだが、音楽の中にフリーメイソンのキーワードとなる要素をいれて作られた作品(♭が3つの調性や楽器編成など)は多くある
ただ、これについては重要視されがちだが、作曲家であれば注文があればその通りに作ることなどお手のものなので、僕としてはそこまで重要とは思えない
貴族に献呈するのと同様に、フリーメイソンが喜びそうな要素を盛り込んで作ったのではないか?
こういうと媚びているように聞こえるが、注文に答えるというのは決められた条件の中でオリジナリティを出すというある程度の実力が必要とされるものなので、それはそれで作曲家としては面白みもある
ベートーベンの性格から考えて、フリーメイソンのような組織は嫌いなはずである(個人的偏見あり)
しかし、ベートーベンの周りにはフリーメイソンのメンバーがたくさんいた
フリーメイソンと関わりがない方が不自然である
仮に「ピアノと合唱と管弦楽のための幻想曲 作品80」が入団式を描写しているとしたら、入団式を経験しているということにもなる
(フリーメイソンの儀式は崇高で部外者は入れないので、見学やメンバーから話を聞くといった可能性は相当低いと考えられる)
ベートーベンがフリーメイソンだった
と言ってしまうのは、話としては面白いかもしれない
フリーメイソンとしても、ベートーベンがメンバーだと公言できるメリットもあっただろう
しかし、本当に大切なことはベートーベンがフリーメイソンだったかどうかではなく、その関わり方にあると思っている
なんとか会とかなんとかクラブとか
今でも横のつながりを作る組織はあるし、付き合いでそういうところに顔を出すなんてこともあるでしょ
なんとなく、そういう感じだったのではないかと思っている
結局のところ、今も昔も変わらないということだろう
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