われら闇より天を見る 2023.3.26

こんばんは。

今週読み終わった一冊は『我ら闇より天を見る』(Chiris Whitaker 鈴木恵訳)です。

心に残った言葉、印象に残った文↓

p62 中間があればいいな、あたし。だってそこがみんなの暮らしているとこだもん。すべてか無かでなくたっていいじゃん……沈むか泳ぐかでなくたって。たいていの人は水に浮かんでるだけだけど、それで十分じゃん。だってママは沈むときには、あたしたちまで一緒に引きずりこんじゃうんだもん。

p90 みんなが君を見ていても、ほんとのきみは見えていないと思うことはないか?

p140 
「うちに帰りたい」ロビンは言った。
「そうだね」
「怖い」
「あんたは王子様だよ」

p170 
「わたしもよくそんなふうに憎んでた。その炎がときどき熱くなりすぎるのよね?」煙草で風が少し燃え上がった。
ダッチェスはまた草をむしろはじめた。「あたしのことなんか、くそほども知らないくせに」
「まだ若いんだってことは知ってる。わたしも年をとるまではわからなかった」
「何が?」
「自分がこの世でひとりぼっちじゃないってことが」

p212
マーサは溜息をついた。「誰かが何かを見てますようにと祈りながらドアをノックするなんてのは、捜査をしてるとは言えない。利用できるネタを自分から探しにいかなくちゃ。見つからなかったら、自分でこしらえるの。度胸よ、署長。いまはもう度胸しかない」

p248
海は果てしないが、おれにはその果てが見える。地球が見える。丸井曲線のむこうに明日があるのに、まわろうとしない地球が。空を支える雲や、砂漠の夕暮れと都会の夜明けが見える。まもなくおれは闇と星とその衛星になる。世界はおれが指を一本持ちあげれば隠れちまうほどちっぽけな、取るにたらないものになる。おれは自分が信じてもいない神になるんだ。悪いやつらなんか追っ払えるぐらい大きいんだ」

p286
「人は終わりから始めるのさ」

感想
訳だから、あまり文に引き込まれることは少なかった。だけど、主人公とウォークの着丈さには感服するほどだった。
また、どこかの文で「俺は毎年ベルトに新しい穴をあけることになる」という表現があった。その表現から、「毎年太っていく」ということを想像できるから、面白い表現方法だなと思った。海外らしい。
作者はイギリス人作家だというが、彼自身アメリカのサスペンスに影響を受けて物語を書くようになったという。また、文中でハルがいう「人は終わりから始める」という部分が、この小説の本髄だと思う。
この小説自体、海外タイトルは『WE BEGIN AT THE END』である。
人は暗闇にいないと光を見つけることはできないし、悔しい気持ちがあるからうれしいときにうれしいと感じられるようになるのだ。何事も、それと対になる言葉や体験を知っていないと、経験していないと、その逆も感じ取ることはできない。
この小説は、重要な部分を拾うためにももう一度読み直したいと思った。
1年後もう一度読むことをここに誓う。

2023,3,26書す

人生やりたいこと、読みたい本が多すぎる!!

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