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未来へつなぐ農業遺産【たたら体験学習編】

 こんにちは!奥出雲町では、たたら製鉄と農業が結びつくことで栄えてきた歴史や知恵を未来へ伝えていくため、次世代を担う子供たちへの教育に取り組んでいます。
 様々な取組のうち、今回ご紹介するのは、町内の小学6年生を中心とした児童を対象とする「たたら体験学習」です。この学習は、今を生きる私たちの暮らしの背景にある、たたら製鉄に関わる歴史や文化を、体験を通して学ぶ教育実践です。2003年に始まって以降、少しずつ内容を充実させながら今日まで実施されており、2017年度には、第48回博報賞の日本文化理解教育部門において文部科学大臣賞も受賞するなど、奥出雲町のふるさと学習の目玉の一つと言えます。

※博報賞は、公益財団法人博報児童教育振興会が実施する、子どもたちに対する優れた教育活動に贈られる賞です。そして、文部科学大臣賞は、博報賞の受賞者の中から、特に奨励に値する活動に贈られます。

学びのプロセス

 小学生たたら体験学習は、大きく「1.事前学習」「2.操業体験」「3.事後学習」の3つの過程に分けられます。

事前学習

 まず始めに、各学校にて授業やフィールドワークを実施します。奥出雲の農業に製鉄の歴史が深くかかわっていることなど、今を生きる私たちの暮らしと、たたら製鉄がどのように関係しているのかという視点から学んでいきます。また、学校によっては、砂鉄を含む山を削る採掘作業の体験や、たたら製鉄に使用する炭焼きの体験を実施する学校もあります。学習を通じて、児童にとっては「当たり前」の風景の中に秘められた歴史について学びを深めていきます。

たたら体験学習事前学習1
教室での授業
たたら体験学習事前学習2
棚田などでのフィールドワーク
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砂鉄の採掘体験(児童が採取した砂鉄は、たたら操業体験の際に利用されます)
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炭焼き窯での炭焼き体験

操業体験

 操業体験は、町内の各小学校の6年生を中心とした児童が、小学生のために建てられた「たたら場」に集まり、たたら製鉄を操業することで、鉄づくりを実際に体験します。操業体験は2日間にわたって行われ、1日目には、粘土をこねて炉をつくる作業から始まります。この他にも、砂鉄を含む土砂を水流に流し、比重を利用して砂鉄を選別する体験や、操業に利用する木炭を切って準備する体験などを実施します。

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粘土をこねて製鉄炉をつくる
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水流を利用して土砂から砂鉄を選別する

 2日目は、朝から夕方まで製鉄作業を行います。たたら製鉄の国選定保存技術保持者の木原明村下(※)の指導のもと、前日につくった粘土の炉の中に児童が砂鉄と木炭を交互に入れ、同時にふいごを使って炉の中に空気を送り込みます。
 夕方になると、粘土の炉を壊して、中にある鉄の塊「ケラ」を取り出します。真っ赤に焼けた鉄の熱気を感じながらの作業です。

※村下(むらげ)・・・たたら製鉄の操業を司る技師長の役職名

活動写真①児童がたたらの炉の中に砂鉄と木炭を交互に入れてゆく
炉に中に砂鉄と木炭を交互に入れる
活動写真②国選定保存技術保持者の木原明氏より直接指導を受ける
たたら製鉄の技術保持者、木原村下への質問タイム
活動写真③たたらの炉を壊し、中から真っ赤に燃える鉄を取り出す
操業の最後に粘土の炉を壊して真っ赤に焼けた鉄を取り出す

事後学習

 作業終了後は、各学校で体験を通して得た学びを深めたり、児童が感じたことや考えたことを保護者や下級生に伝える学習を行います。児童の感想文をみると、それぞれの感性でたたら製鉄と地域の関係を学び取っていることがわかります。
 農業遺産は、その地域に住む人にとっては「当たり前」で、価値に気づきにくい面があります。ですから、他の地域と比較したり歴史を知ることが自らの地域の、あるいは日常の再発見につながります。たたら体験学習は、始まってから既に19年が経過し、始めの頃に学んだ子供は既に大人になっています。この学習を継続することで、1人でも多くの人に「当たり前がすごい」ということを感じてほしいというのが私たちの願いです。

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児童が作った鉄の塊「ケラ

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