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無防備な寝顔に対する敬意と忘れられる時間の愛おしさ。


部屋に帰ると、同級生の二人が酔っぱらって眠っていた。
一人はクラスで人気があった女子である。もう一人はその親友で、吹奏楽部のメガネが似合う女子。

女子二人が、僕の部屋に来た。
二人はジャニーズのコンサートを見るために東京に来て、その会場の近くに僕が住んでいることを知り、SNSを通して連絡してきた。

最初は、三人でたこ焼きをしながら飲んでいたのだけれど、僕が一度、仕事のトラブルで会社へ行って、戻ってきて、こういう感じになっている。

「……」
よく眠っている。

起こして、二人が宿泊しているホテルまで送って、さよならする。
今後の予定を見積もれば、そういうことなのだけれど、僕も、少し疲れていたことと、あと、三十分ぐらいは会話もしたい。
会話を楽しみ、送っていく。その前に少しだけ疲れをとりたい。

そのインターバルをとりたいために、少しだけ二人を寝かせておこうと思った。

僕は、二人を眺め。
その寝顔を見た。

綺麗な顔して眠っているとは、言い難い表情。
クラスで人気だった女子は、アイプチのせいなのか、半目が開いていて、口をとがらせて、「シュプゥー」と、数秒おきに寝息を立てていた。

メガネが似合う女子は、メガネを外し、顔半分くらい、大きな口を開けて眠っていた。

「……」

女子の寝顔。
いや、たまたま、今の表情がこういうことになっているが、二人とも綺麗で可愛らしくて、性格も活発で、一緒にいて楽しい。
まあ、誰でも眠るのだけれど、眠るって、面白いよなぁ。と改めて考えた。
起きている。眠っている。起きている。眠っている。どちらも本人であり、生命が継続中である状態。どちらが本質なのか。
眠っている時の「停止」。その表情。

異性が二人、僕の部屋にいるということに対する状況への配慮よりも先に、「寝顔」について、考えていると、生きているということに対し、愛おしさが出てくる。そして、この無防備さに対し、ある程度の敬意を示したいと思った。明日のコンサートを楽しんで、今日のことなんか忘れてしまえばいい。
そういう、時間になればいいなと。

と、半目開いていた、クラスで人気だった女子が、目を覚ました。

「あ、お帰り」
「おはよう」
「寝ちゃった……わ」
「ん?」
「見てこの寝顔ヤバくない?」
と、メガネ似合う女子の寝顔を見て、ケラケラ笑い、スマホで写真を撮り始めた。

その後、僕達は三人は、三十分ほど昔話をして、宿泊するホテルに二人を送り別れた。



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