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夏にチューニングしている

6.17.土

 1週間うつうつと雨、唐突に今日からりと晴れた。

 雨だってのにじっとりと暑かった今週、うっすらと汗をかいていた様で、今朝起きると体に小さな汗疹が出来ていた。手の甲、足の甲、足首、普段かゆみなんか感じないところがかゆい、見ると細かい発疹。
 ああ、夏が来た。

 肌が弱いので季節の変わり目にこの現象が起きる。毎回毎回。体が脱皮する様に季節を変えるための発疹。夏から冬になる時は寒冷蕁麻疹、そして冬から夏になる為に汗疹。どちらも1回ばっと出て、1週間ほど痒さが続き、以降はその季節の肌となる。(肌が弱いので夏は日に2回も3回もシャワーを浴びるけれど)。

 私のからだ、今、夏にチューニングしてる。

 ポリポリと手の甲を掻いていたら、夫に「晴れたしどこか行こうよ…うーん…寿司屋とか?」と誘われた。青空に寿司って少し似合わないなぁと思いながらもいそいそと支度する。もう半袖。

 昼から寿司屋。
 昼からお酒を飲む事に憧れている、昼からお酒は大人。私はお酒が好きでは無いから飲まないけれど、好きだったら良かったのになぁと休日の昼にとくに良く思う。(昼からビールたまんねーと言ってみたい)
 寿司屋についたらちょうどカウンターが2席だけ空いていて、今日はいい日だ。

 昼に来たのははじめてで、昼用のメニューをじっくりと見た。昼はランチセットがあってセットは少しお得らしい。メニューを指さして「セットにする?」夫に聞く。夫が緩慢にくびを振って「好きなものを頼まなきゃ」って言うから嬉しくなる。
 好きな寿司を頼む。
 私はお茶だけど、夫は(憧れの)昼からお酒を飲む。私達って大人だなぁ。
 私達って、わがままな、大人だなぁ。好きなものだけチョイス出来る、大人になったなぁと感慨深い。
(全然高い寿司屋じゃ無いんだけれど)

 カウンターの寿司屋で、いつも私は少し張り切り少し背筋を伸ばす。
 「梅干しサワーください」「つぶ貝と真鯛と…」いつもより心持ち声をはる。
 夫の声は全く届かないので、もうそよ風ほども届かないので、いつの頃からか通訳みたいに全ての注文を私がしている。
 どんな原理か夫の声はラジオから聞こえる雑音みたいに意味をなさず、ホワっと解けて形をなさない。隣にいていっそ笑える程に気付かれない。
 この人私が居なかったらどうなっちゃうの。と、寿司屋のカウンターで愛おしさが溢れる(機嫌が良い時は、今日は機嫌が良い日だったので少し溢れた)。

 苦手なマグロは夫分だけ、大好きな玉子は2回も頼んじゃう(逆に夫は玉子を頼まない)。うん、私達はわがままな大人なのだ。(好きなお寿司は玉子、うに、つぶ貝です)。
 甘エビが来た途端、夫が手を伸ばして尻尾を取ってくれた。2人ではじめて行った寿司屋で(色々あって)私の尻尾を一生外してくれると約束をした。15年、寿司屋で海老が届いた途端夫の腕が伸びてくる。その腕にまた愛おしさが溢れそうだ(そう、とにかく今日の私は機嫌が良いのだ)。

 13時。外に出たら、カンカンと青空でとてつもなく暑くなっていた。
 晴れていたから外に出たのに、太陽に負けて逃げる様にカラオケに入った。大人は虚弱だ。

 18時。カラオケから外に出てもまだ昼間みたいな明るさ。夏って素晴らしい。
 空も私も変わらないのに、5時間カラオケを歌いお酒を飲み続けた夫だけが、少し変わって千鳥足で鼻歌を歌っている。たぶん今、彼は夏にチューニングを合わせている最中。

 夜。酒に飲まれた夫は具合が悪くなっていて、私の手足はまだまだ痒い。チューニングって難しい。


 ところで、ひさびさに文章を書くと全く思う様に書けない。文を書くのも難しい。

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