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16冊目*今夜、すべてのバーで(中島らも)

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<あらすじ>
「この調子で飲み続けたら、死にますよ、あなた」それでも酒を断てず、緊急入院するはめになる小島容。
個性豊かな患者たちとや担当医師との会話、時折訪れる、シラフで現実と対峙する憂鬱、親友との出来事、その妹との関係。
実体験をベースに、生と死のはざまで揺らぐ人々を描く。

<感想>
文章を書いたり、会話をするたびに
語彙や表現の力を伸ばしたいと思ってきた。

この本を開いた冒頭、お酒を飲んだ時の表現に痺れてしまったのだ。物語は入院生活を綴っているはずなのになぜか頭の片隅で渋いジャズとシェーカーを振るリズミカルな音が響いてきた。

まさに、求めていたもの!!
一気に読んでしまった。

本書は「生と死」についてを描いている。
逝ってしまった人々、逝く者、残る者、彼らを観察している主人公の目がやがて読者である私になっていく不思議な感覚に陥った。

死というものに触れた最初の記憶は、伯父だった。彼は末期がんになっており最後にお見舞いに行った時の姿が芥川龍之介の蜘蛛の糸に出てくるカンダタに酷似していた。

ユーモラスな人でよく笑いよく喋っていたと思うそんな彼が、最後の糸を掴むような動きと呻きを発していたのだ。

こびりついた。
死が恐ろしく、なぜ生まれてしまったのかと幼心に恐怖した。夜が来るのが怖かった。

それは数年間続いて、今でも少し思い出す。
死への恐怖が薄らいだのは、老いる人の満足そうな顔を見ることができたからだろうか。

テレビや雑誌に取り上げられるような功績を残したわけではないが、彼らは大変に愉快そうだった。

親戚に「あー楽しかった」と言って死んだ者がいる。家族と一家団欒で夕飯を食べ終えた後に事切れた人がいる。祖母は全ての子や孫に挨拶をしてみんなに囲まれながら逝った。

死も悪くないなと思った。
だからこそだ、生というこの時間を大切に過ごさなければと思ったのだ。大切に眠る、大切にサボる、これも重要。

理不尽なことや、腑に落ちないことはたくさんあるし、不満にも思うがそれは、そこそこ落ち込んだら自分の機嫌とりだけして過ごす。

人生は、宇宙規模で見たら言葉を発せぬまま終わるくらい短いのだから。


「今夜、すべてのバーで 〈新装版〉(中島 らも)」 https://www.amazon.co.jp/dp/4065220971/ #読書管理ビブリア

読書管理ビブリア

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