見出し画像

書活287日目*母の味を再現した日。

「この味、◯ちゃんの味だね」

◯ちゃんとは、私の母のこと。今日夕飯に出した「白菜としめじの卵あんかけ」なるものの味がそうだと娘が言ったのです。

私は母のご飯が世界で一番好きです。ただ、説明が下手なのか、説明を聞くのが下手なのか、伝授されたことがほぼありません。

母いわく、私は不器用だからということ。結婚するまでキッチンに立つことなく、過ごしていました。

「嫁いだらやりたくなくともやらなくてはならないのだから」これは祖父の言葉。なので母も祖母から何かを教わることがなかったようなのです。

結婚が決まるか決まらないかの頃に料理教室へ行き、基本のきの字を覚えて嫁いだ母の味は、娘ながらに料亭の味のようだと思っています。

「お母さんから教わりなさいよ、いなくなってからでは遅いんだよ」と夫はいいます。彼は若くしてお母さんを亡くしています。

「おふくろの茶碗蒸し」それが食べたいのだというのですが、誰も再現できないんだとか。

「正月に大量に作り置くのが恒例で、でもたくさん作るもんだから最終的に具材が素麺とかになるんだよ。」

彼にとっては面白エピソードなのかもしれませんが、私はそれを聞くたびに胸の辺りに寂しさがじゅわりと滲んでくるのです。

母の味をいつまでも食べていたい。それでもなぜか聞けない私は、母の味をこの舌先に叩き込むように味わうのです。

娘が中学生になって、行けるタイミングをなくしています。忘れてしまわぬうちにまた食べに行きたいと、母の元へ駆けていきたい衝動に駆られているのですが、子ども第一に考えている母からは

「来なくていい」と言われてしまいます。そんなことをしたって喜びません。嬉しいかもしれませんが、孫娘が心配でたまらなくなるんでしょう。

少し焦る自分がいるのですが、日々の生活を大事に過ごすことこそが両親の望むところな気がします。

そんな日々を過ごしている本日の夕飯時

「この味、◯ちゃんの味だね」

そう娘から言われたこと、最上級の褒め言葉をもらって私は有頂天です。ちゃんとメモをとっておかなくちゃ!!

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターの活動費として使用いたします。