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52冊目*ブラック・ティー (山本 文緒)

歯車が狂ったのはどこからだったろう。就職して三年目に先輩に失敗を押しつけられた、あの時だ。皆と同じようにやってきたつもりだった。結婚して子供もいるはずだった。なのに今の私は、常識さえ捨てれば、働かなくとも暮らしていけると知っている。純真でもなく、賢くも善良でもない。自分のしたことはいつか自分に返ってくるのかもしれない。でも……。心に問題を抱えた寂しがり屋たちが、懸命に生きるさまを綴った短篇集!

Amazon より

それでも生きていかなくっちゃ。

人生何があるかわからない。
それがいいことか悪いことか、出会いなのか別れなのか、虚無にも似た感覚に陥ったとしても、ただもうとにかく生きとくか、となる。

この物語に出て来る登場人物たちは、大なり小なり問題にぶち当たっている。それに対して強くも弱くもなく、ただ自分の道を淡々といっている。

物語の最後は決まって余白のまま終わる。
一体どうしたのだろうか、と読者は考える余白。

人生において、絶対的な正解はほぼない。
だから迷うのだ。迷って悩んで孤独感に押しつぶされた時に私は空を見上げる。宇宙というものを考える。大気圏外の世界は一体どうなってるのかと果てしなく考えつくして、自分の存在を振り返る。

「ちっさ!!!」

となったらあとは眠るだけ。
ちっせー私が、この問題の答えに辿り着けるわけがない…寝よう寝よう、とりあえず寝て明日の自分に委ねよう。

そんなことをして年を重ねてきている。
この人たちは、これからどうやって生きていくんだろうか。本を閉じてその余韻に浸る。

夜が長くなってきた今、少し空想に耽るのにちょうど良い本なのではないだろうか。

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