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AIが書いた小説『スカイフック』第3話 機長が残した謎のメッセージ

B29戦略爆撃機の最後尾に位置する後部銃座に座り、ただ一人進行方向とは反対の方を向いているサムエル・ロバートC軍曹は祈った。

今までの犯した罪を懺悔した。神に許してもらうためにひたすら祈った。これからは、正しい人間になると誓った。そして最後に無事に帰還できるように祈願した。

今日は彼にとって初めての経験なのだ。彼の目の前には他の爆撃機は見えない。つまり、彼らの『teaser』は、今回の爆撃機の249機の中の最後尾を飛んでいるのだ。

「テール」の中でも、最悪の「テール」だ。撃墜されるのを見られることはあっても、自ら見ることはできない最悪のポジションである。

高度が安定すると、機長のシャフラツ・ポール中尉のいつものクルーへのチェックが始まる。

作戦中は、コックピットとそれ以外の行き来ができないようになっているが、機内全員が無線で繫がっているので、チェックの様子が手に取るように分かる。

コックピットのメンバーのチェックが一通り終わると、外のいるガンマン4人に回ってくる。夜間攻撃の場合、ほとんど彼らの出番はない。それなので、ちゃんと配備についているのか確認する程度で終わる。

順番も、センター・コントロール・ガンマン(中央上部銃座射手)から始まって、右左のガンマン(サイド銃座射手)と続き、最後がバックガンマン(後部銃座射)のサムエル・ロバートC軍曹で終わる。

センター・コントロール・ガンマンのシェスハンスキー・ハロルド二等軍曹に向けて、機長がチェックしてきた。

「ハロルド、夜空は綺麗かい?」

「最高だよ。中国の薄暗い空とは大違いだ。南太平洋の空は、星が輝いている。南十字星が、綺麗だぜ。中尉も、見に来てください」

「お誘いありがとう。残念だが、今は操縦桿から手を離せない。帰ったらどれだけ綺麗だったか教えてくれ。それともう一つ、星に関しての飛び切りのジョークを一つ考えて、帰還後報告するように。分かったか?」

「了解。中尉」

機長のシャフラツ・ポール中尉は、謹厳実直な男である。彼は、32歳だが、どう見ても40歳を超えているようにしか見えない。地上にいる時彼は笑わない。笑顔自体を見せたことがない。

家族の話を一切しないので、結婚しているのかも、誰も知らない。しかし、作戦の為に空に飛び立つと、冗談がうそのように彼の口から出る。

彼は、無理やり冗談を言って愛機のクルー全員の気分をほぐすのも、仕事の一つだと思っているようだ。

彼の本心ではない。その証拠に、地上に降りて、ブリーフィングの最後に、作戦中に出されたクイズの答えや、考えたジョークをポール中尉に報告しようとすると、厳しい表情を崩さずに右手を少しだけあげて「もういい」のような仕草を見せる。

それでも御構い無しに続けようとすると、首を少しだけ左右に振って制する。そして、左目を軽くウインクして「ありがとう」とそっけなく答えるだけだ。

それでも、それぞれのクルーは、毎回作戦で出撃中の出されるポール機長の答えを必死に探す。無駄に終わるのはわかっているのにそうするのだった。

ライトとレフトのガンマンにも同じような宿題を与えて、最後にバックガンマンのロバートC軍曹になった。

「ロバート、何か見えるか?」

「何にも見えない」

「今夜は、一人だけで寂しいと思ったから、仕掛けをしておいたよ」

「どうせ下らない仕掛けでしょう」

「そうでもないさ、降りたら外から自分の座っている席を見てくれ。メッセージが書いてある。何が書いてあったか、報告してくれ。命令だ」

「ああ、無事に降りて報告できるように祈っておいてくれ」

「もちろん、報告を待っている」

「オーケー」

飛び立ってから、三時間をとっくに過ぎて、四時間の飛行になろうとしていた。外は黒く塗りつぶされていた。先ほどまで出ていた星屑も、黒に塗りつぶされている。

編隊の前の暗闇に横たわる得体の知れないとてつもなく大きな塊が迫ってくる。陸地に当たる波と思われるクリームの縁取りの様な曲線が見えてくると、編隊は西に方向変えた。

昼間なら、見事な形をした富士山が見えていたはずだ。富士山が見えてくると、東か西に方向を変えるのだ。富士山は、何度見ても美しい。

今日は、見られないのが残念だ。

しかし、今夜の目の前に立ちはだかると思われる黒い無言の富士山の存在は、魔の山であり恐怖心を与える大きな盾となって立ちはだかっている。

それは、これから我々が行おうとしている行いに対して、不幸を与えるような悪い予感を与えた。


これまでの話
AIが書いた小説『スカイフック』第1話 前書き・夕暮れの出撃|大河内健志|note
AIが書いた小説『スカイフック』第2話 いちばんうしろのいじめられっ子 |大河内健志|note

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