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短編小説『あと3歩踏み出せばあなたのもとへ行ける』

私は今、闇の中にいます。

深い闇の中、一切の音も色もない深い闇の中。

絶望であれば、過去があるはず。

私は、その過去を消し去りたい。

過去を振り返れば、悲しみが増すだけ。

思い出は、悲しみを深くする役目でしかない。

私は、もう振り返ることも、前に進むことも出来ない。ただ、暗闇の中に落ちてゆくだけ。

死にたい。死にたい。もう生きて行けない。

これ以上生きるのは辛い。もう耐えられない。

苦しくて、苦しくて生きて行けない。

悲しくて、悲しくて生きて行けない。

辛くて、辛くて生きて行けない。

もう無理。無理。無理。

死ぬことだけが、私に残された自由。

死ぬことだけが、深い闇の中での安住。

気が付けば、見知らぬ駅。

私は、自分の知らないところで、最善の方法を探し出していた。

今、無機質な駅員のアナウンスが、通り過ぎる特急電車の注意を呼び掛けた。

それは、目隠しをされて死刑台の上にいる私にささやきかける牧師の声のように聞こえた。

これで自由になれる。

あとは、三歩足を前に進めるだけ。

あと三歩だけ。

たったそれだけで、私は解放される。

それだけが、私に残された唯一の希望。

私は、今から特急電車に飛び込んで、あなたのもとへ行きます。

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