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時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第24話「背を向けるものは斬る」

齊藤一は、菊屋の峯吉から坂本龍馬は、醤油蔵の隠し部屋に潜んでいる。近江屋の二階には、十津川郷士と名乗っている三人組みが、宴会をしているとの報告を受ける。

「よし、藤堂平助さんと服部武雄さんが中に入って、中岡慎太郎ら三人を外に連れ出して下さい。あくまで、不法侵入した不逞浪士を排除するという形です」

藤堂が、

「もし、刃向かってきたら?」

「当然、応戦して下さい」

日頃無口な服部が口を開く、

「相手が三人、こちらが二人で大丈夫か。それに近江屋と言えば、元力士の藤吉もおるぞ」

「それは、百人力、今武蔵の服部さんの台詞とは、思えないですな。服部さんが居れば大丈夫でしょう。何も心配していません。出発してください。通りに出ると目立つので、各々路地裏を通り、岬神社にて集合。毛内有之介さんは、この菊屋の二階から状況を監視しておいてください」

齊藤ら御陵衛士の面々は、それぞればらばらに出発して、大石(鍬次郎)隊が待機している岬神社に集まった。

「大石さん、近江屋の二階に中岡らは居る。坂本龍馬は、隠れ部屋で寝ている。二階には相撲取りの護衛と中岡ら三人組だけだ。藤堂さんと服部さんが中に入って、土佐藩の命で保護するという名目で三人を連れ出す。始末するのは、高瀬川を渡ってからだ。それまでは、手出しをしないでくれ」

「そう簡単に出てくるかな。さっきの様子では、そんな感じじゃなかった。かなりてこずりそうだな。齊藤さんは、ここで監視しておいてください。大石隊は近江屋周辺を固める」

「あくまで目立たないようにお願いします。これは土方さんからの伝言です。たとえ何があっても先程みたいに、この界隈で刀を抜かないでください。今夜は、月が出ていて目立ちますから、特に注意をして下さい」

「分かった。しかし、相手が先に抜いて、斬り掛かってきたら、応戦する。それと、背を向けて逃げ出す者は容赦なしに斬る」

「武士として、それは当然です」

大石鍬次郎は、にやりと悪魔が獲物を見つけたような顔をした。

つづく 


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大河内健志
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