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AIが書いた小説『スカイフック』第13話 人間であることの限界

昼前には、遺体も処分され、蚤の市のように校庭に並べられた墜落した機体の破片やかろうじて形が残っている部品などの戦利品も、軍が根こそぎトラックで運び去って、一息ついたところだった。

そこへ、大阪の中部軍参謀室から連絡が入った。

今回の敵大型戦略爆撃機を夜間にも関わらず、高射砲で撃墜したという輝かしい戦果に対して、国武中将はじめ参謀部の幹部が直々に視察をし、戦功を祝福するというものだった。

国武中将一行は、すでに大阪を出発し、昼の2時ごろには着く予定だそうだ。

当然、今回の撃墜の立役者である高射砲鶴舞分隊の加藤分隊長にも、同様の連絡が入った。

昨夜の戦果に対して、国武中将直々にお褒めのお言葉を頂けるとのことだった。

加藤分隊長は、飛びあがらんばかりに喜んだ。

すぐに米田上等兵を呼び内容を伝えた。

それを聞いた米田上等兵は、複雑な表情を見せた。

自分が撃ち落とした敵機が民家の上に落ちたと聞いていたからだ。

自分のミスで、自分が生まれ育った街の民家に落としてしまったこと。墜落するさなかに機体から放り出された爆弾が、街中のいたるところにばらまかれて落とされたことなどを後悔していた。

何故、咄嗟に修正を加えてしまったのか。

そればかり考えていた。

計算の通りに発射すれば、何も問題はなかったはずなのに、それが出来なかった。

訓練と経験が、やはりものをいうのだろうか。

いやそんなことはない。訓練と経験を積むということは、主観的な行動には役立つかもしれないが、計算の通りという客観的な行動の妨げにしかならない。

自分は、敵機が爆弾を落とそうとするのを見て、動揺してしまった。とっさに修正を加えてしまった。

なぜだ?

米田上等兵は、人間であることの限界を感じていた。

一方、加藤分隊長は、陸軍大学校出身者が軍の上層部を牛耳っていて、自分は帝大を出ているにもかかわらず、肩身の狭い思いをしている。

陸軍大学校出身者の序列は、階級よりも出身の学年によって左右される。封建的で、閉鎖的な組織であった。

そのような組織では、アメリカには、勝てないと加藤分隊長は、常々考えていた。

今回の撃墜は、まさにいい機会だったのである。

実戦おろか、実弾発射の殆どない召集の上等兵が、自分の編み出した計算方法を使って、僅か2発でB29を仕留めたのだ。

こんな快挙は、ないはずだった。

幸いにして、参謀本部の国武中将が直々にお褒めの言葉を頂けるという。こんな有難いことはなかった。

「米田上等兵、私は、君が編み出した射撃方法を理論化して、国武中将にお見せしようと思う。この方法を使えば、誰でもが高射砲の命中率を上げることができる。強いては、今後の防空体制の在り方に何らかの楔を打つことができる。君も、上等兵に甘んじている場合じゃないよ。さあ、射撃方法をまとめた報告書を作りますので、手伝ってください」

加藤分隊長は、何もわかっていない。

射撃方法なんて誰でも習得できる。

問題は、その通りに撃てるかということだ。

理性を殺して、決められた通りの行動がとれるかということだ。

それが、一番難しいのだ。

加藤分隊長は、まだ若い。

そこが分かっていないのだ。

 

村雲小学校にいる守備隊の兵隊は、国武中将が来られると分かって慌てた。

何しろ、敵兵の遺体は片付けてしまったし、外せるものはすべて外して、みんな持って行った後だったのである。

残っているのは、主翼が外れて、尾翼の無くなった巨大な芋虫の様な胴体だけなのである。

取り敢えず、それを校庭に引っ張り出すしかなかった。

校庭と胴体には、建物や大木があったりして、そのまま運ぶのは、到底無理もないことだった。

それで、胴体を三等分に切り離して、一つずつ運び込むことになった。

何組にも分かれて溶接機で切り、やっとの思いで三等分した。

三等分すると、それを竹藪から竹を切れるだけ切ってきて、それを胴体に差し込み梃子の応用でそれを転がしていこうということになった。

先ずは、機首から先に運ぶことになった。

何本もの竹を差し込み、支点になる添え木を入れて、一斉に押し出した。

土を噛むような音が聞こえて、意外にもそれは軽く、1メートルほど転がった。

動かしてみると、その下に、米兵の死体があった。

さらに動かしてみるともう一体の死体があった。

国武中将が来られるので、これはいい展示品だということで、早々に校庭に引っ張り出された。

遅れて機首が、祭りの出し物のように大勢の兵隊に転がされてやってきた。

後の二つも持ってこようとしたが、機首だけでそれなりに場所を埋めることができるし、幸いに2名の敵兵の遺体が出てきたので、見て頂くのはこれで十分だということで、そのままにしておくことになった。

結局、遺体を晒し者にすることにしたのである。


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