短編小説『ひとりで歌うのが好き』
ワタシは、お父さんが自殺した日から、ピアノを弾くのをやめた。
なぜなら、ピアノを始めた頃から、お父さんと遠く離れてしまったような気がするから。
急にピアノが憎くなった。
あれほど練習したのに、弾くとますますお父さんと離れてしまうような気がしたのでやめた。
代わりにギターを始めた。
お父さんの部屋には、ギターがあった。
まだ仲の良かった幼い頃のある日、お父さんがひとりでギターを弾いていた。
近くに寄って、だまって聴いていると、「弾いてみる?」と言って、ギターを持た