どうか助けてください! (小説『夕暮れ前のメヌエット』より)
クラブハウスのある方へ顎で示した。
若社長は、悪戯を親に叱られた子供のように急いで、逃げるように駈け出した。
沈黙が走る。
広い空間の中に私と田中の抜け殻がある。
強烈な孤独を味わう。
落ち着かなければ、冷静にならなければと思えば思う程、体が震え、金縛りにあったように硬直する。
高校時代のいつもの小津さんの横顔が浮かんだ。
突然、こちらに今までに見たことのないような形相でこちらを睨み、「人殺し」と叫ぶ。
寺町御池通の青信号が点滅して、赤信号に替わろうとした時に