二日酔いである



初めてnoteを書く。


理由はひとつ、二日酔いの気怠さをそっと発散したいのだ。

表向きはインスタだのツイッタだので偉そうに、都心で働く1人暮らしのキラキラ女子気取ったりもするが、正直そんなことどうでもいい。

そんなきもいこと忘れて胃の中でぐるぐる渦巻くもっときもいものを吐き出せる場所が必要なのだ。

だからnoteを選んだ。ただそれだけなのだ。



とりあえず私は2022年1発目のひどい二日酔いに悩まされた。


サービス業なもので年末年始はひたすらに働き続け、帰省やなんとなくで休みを取る学生やフリーター達の穴を埋めるために休みもまともに取れずにヒーコラヒーコラしていた。

やっと休みが取れたのは1月10日も過ぎたタイミングで、もう正月もクソもなかった。

心身ともに結構疲労していたので、心が幼女返りを求めて求めて仕方ない!と重たい身体をずるりずるりと引きずって実家へと向かい、なけなしの正月気分を味わうことにした。


実家は実家で三が日のうちに親戚が集まって正月を満喫していたもんだから、1月10日も過ぎたタイミングでぬるりと現れたしょーもない娘の為に正月満載モードでは迎えてくれなかった。が、それでいいのだ。

豪華なおせちなんていらない、いつも通りでいい。

新年の挨拶を交わして、ほんの少し正月気分を味わえたらそれだけでいい。


幸いなことに?私にはまだお年玉をあげる対象がいない。
それどころかアラサーのくせに可愛いポチ袋に包まれたお年玉をまだまだ貰う。

既に何人も子どもを産んでいる友人もゴロゴロいるというのに、気取ったアラサーは実家でゴロゴロしながらいまだにお年玉をもらっているのである。

ヘラヘラしながら受け取ったお年玉のポチ袋を、気取ったブランドバッグの内ポケットにしまう。


ウケる。


インスタやツイッタにドヤ顔で載せている、年相応に見栄を張るために買ったブランドバッグに!お年玉の!ポチ袋!

我ながらおもろい、いい年こいて本当におもろい。自分サイコー。


自分の中にあるこういう精神的幼女の部分がたまらなく好き。

いつもありがとうママ。

私はいつまでたってもママの可愛いベイビーなのよ。

でも別に悪いことだとは思わないし、恥じたりもしない。
だってくれるって言うし、貰えるもん貰って何が悪いんだ。
貰える限りは強い意志で受け取り続ける。



とまあ、正月らしいやり取りが終われば、義父との晩酌が始まる。

義父は大酒飲みとまではいかないが酒好きで、あれこれ洒落たウイスキーだの焼酎だのを飲み、長々と語り合うのが好きだ。

私が酒飲みなもんだから、実家に顔を出すと義父は私にやたらと酒を勧め、話し相手になってほしがる。

最初こそ酔って話すことなんか無い、なんて思っていたが、今じゃ立派な酒飲み仲間みたいにぺらぺらと色んなことを語り合うようになった。

ゴールデン街でたまたま隣に居合わせた陽気なオッチャンと飲んでいるような感じ。


私は相変わらず酔っていた。

っていうかいつも酔っている、それもベロベロに。

焼酎のコーヒー割りが好きだ。

グビグビ飲めてしまう魔法の割り方だと思う。

ちなみに生まれが沖縄だったりはしない。

実家で晩酌するのにコーヒー割りを選ぶ気取ったアラサーなんてあんまりいないんじゃないの?

知らんけど。


義父は見たこともないラベルの高そうなウイスキーを飲んでいた。

話題は積み立てNISAがどうだとか楽天証券の口座開設しろだとか、金のことばかり。

この辺は精神的幼女も引っ込んで真面目に金の話に食いつく。

結局私は酒飲みの気取ったアラサーなのだと思い知るわけだが、どうせ酒飲みなので寝て起きたら忘れている。きっと。


ブラックコーヒーの空いたペットボトルと、焼酎の瓶が2本並んだ。

義父はニコニコと楽しそうに日本酒の瓶を開けだす。

私はそれを止めもせず、新しいグラスを出すなどしている。


義父とのへべれけ晩酌は6時間くらい続いたように思う。

そろそろ寝るよ、と席を立つ義父を横目に、私は翌朝の二日酔いを既に確信していた。

大学生の頃のようにワッとテンションが上がって大騒ぎして、何にも覚えてなーい!みたいな酔い方はもうしなくなった。

淡々と、深く深く酔い進み、不調の兆しをしっかり感じる酔い方だ。


なけなしのウーロン茶をグラス1杯グイっと飲み干して、実家の大きなソファに沈み込む。

正月だ。

大人になるのも悪くない、こんな風に過ごす正月があっていい。

ガキの頃にはわからない、大人だけの正月。

さっきまで精神的幼女とか言っていい年こいてお年玉を貰っていたというのに、都合の良い時に大人を盾にして酔いを美化する。

まあいい、それも大人ってもんだろう。


頭の中と胃の中がぐるぐるとしているが、わたしはそのままとっぷりと眠りについたのだった。




が、酷い頭痛がする。

到底眠れやしない深い深い痛み。

オイオイオイ。

まだ早すぎやしないか、1度寝て起きてからが二日酔いってやつだろうがよ。


むくりと身体を起こし、台所へ移動すると換気扇をつけ、その下でタバコに火をつけた。

もうバカまっしぐらである。

脳みその血管がはち切れそうに痛むというのに、タバコなんて吸ってみろ。

血管がギュッッッッッと縮むのがわかる。

これはもう死だ、死のシグナル。

過去に何度も味わった苦しみだというのに、いつまでたっても学習もせず同じ苦しみを繰り返す。


耐え難い吐き気が込み上げてきて、本能のままにシンクにぶちまける。

ズルズルとゴミ受けに吸い込まれていくそれ。

なんとも情けない。

気取ったアラサーが気取ったインスタやツイッタには到底書けないリアルがここにある。


妙に冷静な頭でゴミ受けを取り出すと、生ゴミの袋にそれを移す。

そういった判断が出来るのならばシンクにぶちまけなければいいし、そもそもそこまで飲まなければいいのに、何故か大人になっても出来ない。



酷い頭痛は治まることを知らない。

そして私は耐える以外の手段を知らない。


窓の外は朝日でぼんやりと明るくなっている。

ぐるぐる。

ぐるぐる。

私は明日も仕事がある。


幼女のようにシクシクと泣きながら、大人の正月は終わったのだった。

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