本気
最近、よくフレンチトーストを作る。
私の息子は食パン好きなのだが、毎回そのまま食べさせるのもちょっと気が引ける。親心というやつか。
そこで、
「牛乳と卵を使うフレンチトーストならひと手間加えているし、栄養的にも問題なさそう。」
と今さらながら思いつき、最近作りまくっているのだ。
私のフレンチトーストは、食パンを牛乳に浸し、溶き卵にくぐらせてバターで焼く。子どもの分にはフルーツをトッピングし、自分の分にはメープルシロップをかけてできあがり、というシンプルなもの。
不味くはない。かといって、とびきり美味しいというわけでもない至って普通の味なのだが、
息子はそのフレンチトーストを、毎回美味しそうに食べてくれるのである。
その姿を見て、私は思った。
「明日は本気のフレンチトーストを作ろう」と。
家のどこかに某有名ホテルの朝食のレシピ本があったはずで、その本にはフレンチトーストの作り方も載っていた。
私の適当なフレンチトーストで喜んでくれるなら、ホテルのフレンチトーストのレシピで作れば大喜びしてくれるのではないか。
そう思いながら、その日の夕方の買い物では食パンは息子お気に入りのものを、牛乳と卵はいつもより少し高めのものを揃えた。
次の日。お昼の時間が迫ってきた。いよいよ本気を出す時である。
そう意気込みフレンチトーストのページをめくると、
『まず、ひたし液に食パンを入れ、ラップをして冷蔵庫でひと晩寝かせる』
…
そうか、そもそものスタートラインが違っていたのだ…
“本気”の違いと、思いついた時にまずレシピ本を確認しなかった自分の阿呆さを痛感しながら、いつもどおりのフレンチトーストを作った。
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